【分析】暗号資産市場は拡大しているのか? ドミナンスやビットコイン現物ETFなどのデータから変遷を紐解く
セグメント別ドミナンス推移
この図は、暗号資産を4つのセグメント(ビットコイン、イーサリアム、その他アルトコイン,、ステーブルコイン)に分けたドミナンス推移を表しています。2回のグレー区間は市場規模が大幅に縮小した時期になります。1つ目のグレー区間は「ステーブルコインの時価総額推移とUSTC崩壊」の段落で説明したテラ・ルナショックが震源です。 1つ目のグレー区間(テラ・ルナショック時)では、ビットコインとイーサリアムのドミナンスが上昇、ステーブルコインのドミナンスも上昇し、アルトコインのドミナンスが減少していることが分かります。これは2021年1月にビットコインが当時のATHを更新する際にドミナンスを伸ばし、ステーブルコインのドミナンスが減少した状況とは対照的な動きです。 テラ・ルナショック時には、暗号資産市場において他の暗号資産と比較して安全な価値保存手段とされるステーブルコインに資金が退避し、アルトコインへの再投資が行われなかったことを意味します。言い換えれば、保有していた暗号資産が売却され、ステーブルコインの比率が高まったこととなります。 2回目のグレー区間でも同様に、ステーブルコインに資金が逃避していることが分かります。この逃避は2022年11月、当時世界最大級の暗号資産取引所であったFTXが崩壊したことに起因します。FTXの崩壊は、顧客の預かり資産を同社所有のAlameda Researchに流用していたうえに、Alameda Researchの主要資産がFTX発行のFTTトークンで構成されていたことによるものです。FTX社の疑わしい財務状況が明らかになると、バイナンスは同社のFTT持ち分を売却、FTXは投資家による取り付け騒ぎを起こし、FTTの下落とともに崩壊しました。 同社は破産申請(チャプター11)を行い、Alameda Researchに暗号資産を貸し付けていた企業BlockFiも連鎖倒産し、多くの企業や投資家に影響を及ぼしました。2022年に起きたテラ・ルナショックとFTX破綻事件により、暗号資産市場は冬の時代を迎え、立ち直るまで1年以上の長い時間を要することになりました。