【分析】暗号資産市場は拡大しているのか? ドミナンスやビットコイン現物ETFなどのデータから変遷を紐解く
暗号資産別時価総額推移(単位:10億ドル)
この図は、2020年7月から今年7月まで約4年間の暗号資産市場全体の時価総額を表したグラフです。今年3月14日にビットコインが史上最高値(All Time High、以下ATH)を更新し、暗号資産市場は直近になって成長したかのように感じますが、実は市場が最も拡大していたのは、約3年前の2021年11月8日です。当時は時価総額が2.97兆ドルに達し、直近の最高(2024年3月13日)である2.76兆ドルを約2,100億ドル上回っていました。 しかし、グレーでハイライトされた2区間にかけて暗号資産市場の規模は急速に縮小し、2021年11月頃のATH時点と比べ、約3分の1の水準となりました。それから3年が経過した後赤色でハイライトされた区間で拡大が顕著となり、最盛期の水準に復帰、いわゆる「クリプト・ウィンター」からの脱却を果たしました。
ステーブルコインの時価総額推移とUSTC崩壊(単位:10億ドル)
この図は主要ステーブルコインの時価総額推移です。ステーブルコイン全体の時価総額がATHを達成した前後、約2年前の2022年5月に「テラ・ルナショック」と呼ばれる、市場に衝撃を与える事件が発生しました。図中の赤いエリアを構成しているステーブルコイン「USTC」が崩壊したのです。 この事件の原因となったのは現在のTerraClassicUSD(以下USTC、当時はTerraUSD [UST] という呼称)でした。USTCは一時期ステーブルコイン全体の11.9%を占めていた当時話題の通貨であり、時価総額は186億ドル(約2.4兆円)に達していました(2022月5月9日ドル円レート130.73基準 [*2] ))。 ステーブルコインは、米国ドルなどの法定通貨や、金といった他資産に価格が連動(ペッグ)するように設計された暗号資産です。現在ではUSDTが第1位、USDCが第2位の時価総額を占めており、USDTとUSDCはともに法定通貨である米国ドルにペッグされています。 USTCはアルゴリズム型ステーブルコインであり、裏付け資産がペッグ対象の資産ではなくプログラミングされたアルゴリズム(USTCは、現在のLunaClassic [以下LUNC、当時はLUNA] のMint&Burnを通じてペッグを維持する設計)によって構成されていました。 その崩壊のきっかけとなったのが、2022年5月7日に起きた大手DEXからのUSTCの大量出金によるドルとの価格乖離(デペッグ)でした。信頼が揺らいだことにより5月7~8日にかけてはテラブロックチェーン上のDeFiプロトコルから預入金の約20%が流出。取り付け騒ぎの様な格好で急激なUSTCの売却(償還)が進み、USTCは1ドルからさらに大きくデペッグ [*3] 、アルゴリズムによってMint(発行)が繰り返されたLUNCもあっという間に価値を失いました。 テラ・ルナショックの更なる詳細については割愛 [*4] しますが、この事件により当時世界最大規模の暗号資産ヘッジファンドであったスリー・アローズ・キャピタル(3AC)をはじめ数多くの企業や投資家が甚大な被害に遭い、暗号資産市場の急激な縮小のきっかけとなりました。