擬似エンジン音を鳴らすBEV「アバルト チンクエチェントe」に対する識者たちの3者3様の評価
アバルトの電動化戦略において中核を担う話題の一台「チンクエチェントe」。 ベースとなっているのは、愛らしいフォルムが特徴のコンパクトBEV、フィアット500e。そこに創始者の星座であるサソリのエンブレムをホイールやボディサイドなどにあしらう。 ▶︎すべての写真を見る 最大のウリは、アバルトの代名詞である爆音マフラー、レコードモンツァの排気音を忠実に再現した「サウンドジェネレーター」を採用していること。 これを作動させることでBEVとは思えぬ、アバルトらしいエキサイティングな走りが楽しめるのだ。
車の未来を暗示する
アバルトは1950~60年代を中心に活躍したイタリアのレーシングコンストラクターで、主にフィアットの小型車をベースとしたレーシングカー造りに定評がありました。 現在はフィアット500の高性能バージョンである595や695などを展開し、フィアットのスポーツイメージを牽引するブースターとしての役割を果たしているわけです。そんなアバルトがBEVのフィアット500eでらしさを表現するとどうなるか。 最もこだわった点はずばり、“音”です。アバルトが手掛けた往年の名車のエンジン音を研究して作り上げたというサウンドは、アクセル操作とシンクロするように音の高まりでその力感を伝えます。 そんな子供騙しな……と思われるかもしれませんが、床下に配されるデカいスピーカーを通じて鳴らされると、その音圧も加勢して簡単に気持ち良くさせられます。結果、車に愛着も湧くと。 同種の研究はトヨタもやっていまして、BEV時代に長く愛される車を造るには、音とか匂いとか、マジで重要なポイントになってくるんでしょうね。アバルト500eはそんな車の未来を示唆しているのでしょう。
自動車ライター 渡辺敏史 出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。