京アニ放火殺人、青葉被告の再犯防止支援は「やれることはやっていた」のに、なぜ防げなかった? 犯罪学の研究者が語る「刑務所の実情」
だから対話は、最後のセレモニーに過ぎません。修復に向けてのひとつの方法でしかなく、事件の背景にある当事者のさまざまな問題へのサポートを追究する方が大事です。これは制度を始めてみて分かったことです。 ―現状の被害者支援には問題があるんでしょうか? 法廷で被害者が被告に質問できる日本の被害者参加制度は、それも対話になりうるのかもしれないけれど、まず対話以前に刑事手続きとは別個の生活支援を確立すべきです。 国は被害者支援に本気で取り組むのであれば、お金はかかるけれども、諸外国にあるような「被害者支援庁」を作るべきなんですよ。 被害者が被害に遭った時に、警察や検察とは違うルートですぐに支援団体につながって、被疑者・被告人とは関係なく一貫したサポートを受けられる体制を作らないと、いつまでたっても刑事司法と結びついた形でしか支援を受けられないわけですね。日本のように警察庁主導で被害者支援をリードするのは、その点で問題があると思います。
刑事司法と結びつかせないということは、裁判の決着や刑期の終了が支援の終わりを意味しないという点でも重要です。災害の被災者もそうですし、DV(ドメスティック・バイオレンス)などさまざまな被害を受けた人が、その原因に関わらず突発的な事情で生活が立ちゆかなくなった時、彼らを支援しようと動く社会になっていくべきでしょう。 ××× 森久智江さん 1977年福岡県生まれ。九州大法学部、同大学院(法学修士)を経て、2009年から立命館大で教壇に立つ。主な研究分野は犯罪学、刑事政策、少年法、刑事訴訟法。 ※共同通信の取材班では、読者からの情報提供や体験談などを募集しております。こちらにお寄せください。shuzai.information@kyodonews.jp