京アニ放火殺人、青葉被告の再犯防止支援は「やれることはやっていた」のに、なぜ防げなかった? 犯罪学の研究者が語る「刑務所の実情」
まず刑務官同士の自由なコミュニケーションや職場風土をつくっていかないと、受刑者のコミュニケーションを活性化させることなんてできそうにないですよね。 ▽居場所と仕事があればよいか ―青葉被告には「孤立」の問題があったとたびたび指摘されています。出所後の支援では、孤立化を防げなかったのでしょうか? 海外でも孤立は大きな犯罪要因になっていると言われていて、日本でもそうです。2016年に再犯防止推進法ができて、政策課題として明確に再犯防止が位置づけられ、その中でも孤立が問題とされました。そこで重要とされたのが「居場所」と「出番」です。 つまり、その人がいられる場所と何かしらの仕事や役割(出番)を持つことが大事だと言うことですが、仕事と住む場所さえあればどうにかなるという話ではないです。その点では、青葉被告はある程度サポートされていたわけですから。 ―では、何が足りなかったでしょう?
自分のことを率直に話せる場があったのか、ってことですよね。彼の人生の中で、今回の事件で逮捕されてやけどの治療を受けるまで、そのままの自分が大事にされるとか、認められる経験がなかったわけですよね。 他者とコミュニケーションを取る際に、自分のことをストレートに話すことが、彼にとってはハードルが高かったんだろうなと思います。 ▽支援者は親や友達ではない ―被告を支援した行政職員や訪問介護士らとの付き合いでは満たされなかったのでしょうか? 現場で支援者がしばしばぶち当たる悩みの一つですが、支援者は友達や親のようには関われないです。仕事でやってることなので。当然、プロとして線引きがあることは正しいことだし、そうあるべきなんです。 だから、何かしら違う場を用意していかないといけない。 例えば、滋賀県大津市で知的障害のある青年たちが中心になって作った、性に関する悩み解消へ向けて仲間同士で学習・相談ができるグループがあります。そこで、異性と話す時にどうすれば相手に嫌な思いをさせないですむか考えたり、一緒に遊びに行って友達をつくったりとか、そういう活動をされています。