「子供がいる女性の部下は早く帰らせよう」は間違い? 組織の成長を阻む「性別ガチャ」の克服法とは
<ジェンダー平等ネイティブである現在の20代に選ばれるのは「共育て」を促す企業。多様性のある組織は、葛藤が多い半面でパフォーマンスが高いとの調査結果も>
生まれたときの性別によって、男性なら仕事をして稼ぐ人、女性なら家族の面倒を見る人という一方的な役割を期待されてしまう──。日本では、男女平等が目指されていながら、そうした考えがいまだに根強く残っています。日本の組織、社会や家庭に根づくジェンダー不平等を、羽生祥子さんは「性別ガチャ」と呼びます。 ●日本だけ給料が上がらない謎…その原因をはっきり示す4つのグラフ この状況を解消するためにはどうすればよいのでしょうか? 羽生さんは、『ダイバーシティ・女性活躍はなぜ進まない? 組織の成長を阻む性別ガチャ克服法』(日経BP)の著者で、「日経xwoman」総編集長を務めてきました。そんな羽生さんに、ダイバーシティの風土を根づかせるうえでの現場の「よくあるお悩み」と、その解決策をお聞きします。 (※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です) ■男女で「性別ガチャ」への反応が全く違った ──本書『ダイバーシティ・女性活躍はなぜ進まない?』で羽生さんが特に伝えたかったメッセージは何でしたか。 伝えたかったメッセージは大きく2つあります。1つめは、組織の成長を阻む「性別ガチャ」の正体について。これは、生まれたときの性別だけで、「男性は仕事をして稼ぐ人、女性は家族の面倒を見る人」などと一方的な役割を期待される状況を意味します。 講演で「性別ガチャ」について話すと、男性と女性とで反応が全然違いました。男性の多くは「親ガチャ、配属ガチャはわかるけれど、性別ガチャなんてあるんですか?」という反応。一方、女性は「わかります!」と共感する声が続出したのです。この事実がすでに性別ガチャの存在を物語っています。 本書では、この性別ガチャがどのように生まれたのかを、「歴史的な労働背景と男女の役割変遷」とともに解き明かしています。男女共同参画に向けた歴史を知ると、女性活躍推進は逆差別ではないと気づけるようになるのです。 メッセージの2つめは、「現場あるある10の質問」への回答です。100社以上の企業・地方自治体の研修や講演をしてきましたが、質疑応答でよく挙がるお悩みに、本音を隠さず答えました。彼らはダイバーシティ推進の必要性は感じているけれども、「施策がうまく進まずどうしたらいいのか?」と真剣に悩んでいます。そこに寄り添うかたちで、質問の裏にある「モヤモヤ・反発」が解消する具体的なノウハウも本書に盛り込みました。 ■日本のD&I事情を大きく変えた「女性版骨太の方針」 ──2022年に前著『多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』を執筆されたときから、日本企業の女性活躍や、DEI事情(※)にどんな変化がありましたか。※DEIとは、あらゆる人が公平に扱われ、尊重され、組織・社会において包括される状態を目指すこと。「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」の頭文字をとったもの。 大きな変化は、2023年6月に政府目標として、「女性活躍・男女共同参画の重点方針」(女性版骨太の方針)が発信されたことです。私も有識者会議の委員として方針の策定に関わりました。具体的には、企業における女性登用の加速化という観点で、プライム市場上場企業に対し「2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める」「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」と明示したのです。 これまで政府が掲げていた目標は、「2030年までにプライム市場上場企業の平均で女性役員比率を30%以上」というもの。そこから大きく前進したのは、まず「2025年」の目標を加えたことで、経営層が自分たちの在任中にアクションせざるを得ない状況になったこと。そして、プライム上場企業の平均ではなく、個々の会社に「30%以上」の目標を課し、達成に向けたプロセスまで有価証券報告書に書くよう求めたことです。