夏休み必見!『デューン/砂の惑星/Part1,2』砂漠の中でドレープがたなびく、完璧な映像美に圧倒され…アカデミー賞6部門を受賞したSF映画
1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト◎筆者) 【漫画】怖い!砂漠に現れる巨大な砂虫 * * * * * * * ◆作品本来の情感や文学性 「うわ、何この虫?こわっっっっ!!」 『デューン/砂の惑星』を見て、すっかりのめり込んだのは、特撮による映像美と壮大な世界観、「サンドワーム(砂虫)」の怖さに圧倒されたからだ。 そもそも私はホラーと特撮物があまり好きではない。ホラーは、本当に怖くないとコメディになってしまう。小学生の時『オーメン』や『エクソシスト』を見て、まあまあ怖いとは思ったが、首が回転したりする西欧の幽霊は日本人には何かコミカルで、笑うべきか、怖がるべきか、戸惑った記憶がある。50年も前の特撮がイマイチだったせいもあるだろう。 逆に特撮が行き過ぎてもひいてしまう。私は「キングコング」が大好きなのだが、2005年版はこの理由で好きになれなかった。CGやりすぎ映像と不気味すぎるクリエイチャーは、作品本来の情感や文学性を奪い取ってしまう。
◆最も見事なSF映画のひとつ けれどこの『デューン/砂の惑星』において、映像は完璧だった。砂漠の中で美しいドレープがたなびく衣装は古代文明を思わせ、絵画を見ているような映像美。砂漠を移動するための保水スーツや戦士の甲冑などは未来的なデザインだが、新旧の衣装が違和感なくなじみ、撮影地ヨルダンの風景に見事にマッチ。特別な世界を作り上げた。 私は最初、この映画がハリウッド映画だと気づかなかった。なぜなら、ハリウッド映画にしては、色彩が深く映像が絵画的で、キャラクター造形も複雑。ムードがヨーロッパ映画の其れだったからだ。実際監督のドゥニ・ヴィルヌーヴはカナダ出身。主演のティモシー・シャラメはフランス人の父をもち。一年の数ヵ月をパリで過ごして成長した。 ある意味本作は、ハリウッドの資金やテクニックとヨーロッパの才能の見事なマリアージュといえる。結果、2021年に公開された一作目は大変な興行業成績を上げ、94回アカデミー賞に10部門でノミネート、6部門を受賞。 2024年の第二作は、更なるヒットでシリーズ売上合計10億ドル(約1500億円)を突破! かのスピルバーグが「今まで見た中で、最も見事なSF映画のひとつ」と評したのである。
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