なぜ、ロジカルシンキングが得意な人ほど「深い悩み」にはまり込むのか?
職場には「論理的に考えすぎて悩んでいる人」と「やわらかい頭で悩まない人」がいる。一体、何が違うのだろう? 本連載では、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている“悩み「解消」のスペシャリスト”、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏が、悩まない人になるコツを紹介する。 いま「現実のビジネス現場において“根拠なきポジティブ”はただの現実逃避、“鋼のメンタル”とはただの鈍感人間。ビジネス現場での悩み解消法は『思考アルゴリズム』だ」と言い切る木下氏の最新刊『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』が話題となっている。本稿では、「出来事、仕事、他者の悩みの9割を消し去るスーパー思考フォーマット」という本書から一部を抜粋・編集してお届けする。 【この記事の画像を見る】 これまで本書やこの連載でも紹介してきたように、常に目的に立ち返る思考グセをつけておくと、問題に向き合うにあたって、その人がとらわれている「思い込み=前提」が外れやすくなる。 これが「最終目的逆算思考」の最大のメリットである。 逆にいえば、未知の問題に「原因解消思考」を適用してしまう人は、「これが問題の原因である」という思い込みにとらわれている。 どれだけ理路整然と物事を考えられる人でも、前提が誤っていれば当然、答えも間違ったものになる。 ● 頭がいい人が陥りやすい悩み──前提を外す思考クイズ ロジカルシンキングができる人ほど、なまじ推論能力が高いせいで、誤った前提を握りしめたまま、誤った結論に猛スピードで突進してしまうことが多い。 では、前提を外す思考法とは、どんなものだろうか? それを実感するために、ちょっとしたケース問題を考えてほしい。 【問題】 あるテーマパークでは、アイスクリームを販売している。アイスクリームはよく売れているが、食後のカップやスプーンを付近の芝生に捨てる客が多いせいで、近隣店舗からクレームがきている。この問題をなんとかする方法を考えてほしい。 いかがだろう? このとき、ロジカルシンキングが得意な人の多くは、当然、「ゴミ箱を設置する」という結論にたどり着くはずだ。 ● 思考を「縦方向」から「横方向」にずらしてみよう どこまで意識しているかは別として、この推論には次のような前提がある。 ① アイスクリームはゴミが出る ② ゴミは店舗付近に捨てられる ③ ゴミは近隣店舗からのクレームにつながる これらの前提が動かしがたいものであるなら、「ゴミを回収する仕組み」をつくろうとするのはまったく理にかなっているし、具体策としては「ゴミ箱の設置」に行き着くのも自然だ。 しかし、このとき、テーマパーク側から「美観を損ねるのでゴミ箱は置かないでほしい」と言われたら、どうするか? 多くの人はここで思考がストップしてしまう。 周囲の店には 「テーマパーク側が『ゴミ箱を置くな』と言うので、お客が芝生にゴミを捨てるのは仕方がないんです。私の責任ではありません」 と言い訳をするしかない。 これがロジカルシンキングの限界である。 一方、前提を外して物事を考えられる人がやっているのが、ラテラルシンキング(水平思考)だ。 「決まった前提」から垂直方向(バーティカル)に「決まった結論」を引き出すのがロジカルシンキングだとすると、ラテラルシンキングは水平方向に「異なる前提」を広げていき、そこから「異なる結論」を導き出していく。 ● 悩む人はバーティカルだけ、 「悩まない人」はラテラルも考える ちなみに、先ほどのアイスクリームの事例は、1904年にアメリカで開催されたセントルイス万国博覧会での出来事である(【参考書籍】木村尚義著『ずるい考え方』あさ出版)。 現実には、次ページの表にある「A」のようなラテラルシンキングが展開された。 つまり、アイスクリームの容器そのものを食べられる焼き菓子にすることで、「ゴミの出ないアイス」をつくったのである。 これがアイスクリームコーンの誕生といわれている。 しかし、前提をずらしていけば、これ以外にもいろいろな打ち手が考えられる。「B」や「C」は試しに私が考えてみた例だ。 悩んでしまう人は、このように思考を「横方向」に展開できなくなっている。 悩みにぶつかったときには必ず、自分の思考が「縦方向」だけにとらわれていないかを振り返ろう。 (本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』の一部を抜粋・編集したものです)
木下勝寿