似ているようで、ちょっと違っている レーガノミクスとトラポノミクス
筆者はUSD/JPYの見通し(先行き12カ月)を上方修正しました。新たな見通しは113円と従来から13円切り上げました。周知のとおり米大統領選でトランプ共和党政権が誕生することになり、同時に議会とのねじれも解消したため、「大型減税」、「規制緩和」を中心とする景気刺激策が現実味を帯び、米経済が息を吹き返す可能性が高くなったことが主因です。「強い米国、強いドル」というテーマの下で投資家のリスク選好度が強まり、低金利通貨の円はドルに対して売りが膨らむと予想されます。(解説:第一生命経済研究所、主任エコノミスト 藤代宏一)
筆者はこれまで、米失業率が5%近傍まで低下した状況に鑑み、米景気の伸びシロが少ない点を重視。2018年頃には米景気がピークアウトするとの基本シナリオを念頭に置いてきました。
実際、失業率に先行性を有する銀行貸出態度は2016年初めに厳格化(≒融資基準を厳しくした)に転じ、このことはクレジット市場が景気後退を察知したシグナルに思えました。諸点に鑑み、筆者は早ければ2017年12月連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ打ち止め感が浮上すると予想し、USD/JPYに慎重な見通しを貫いてきました。
レーガノミクスを彷彿させるトランプ氏の経済政策
しかしながら、今やそうした見通しは2018年の米景気拡大モメンタムを過小評価していると思われます。トランプ共和党が掲げる法人税減税、規制緩和は企業収益の拡大を通じて「強い米国、強いドル」を意識させます。こうした政策はロナルド・レーガン元米大統領(1911-2004)が進めた大胆な減税や財政出動による経済政策「レーガノミクス」を彷彿させますし、実際、当時の相場が再現されると考えている市場参加者も多いでしょう。 トランプ共和党政権がレーガノミクスと類似した軌跡をたどると仮定し、今次局面のUSD/JPYに応用すると2017年頃までUSD高傾向になる可能性が高まったように思えます。完全雇用に近い段階での大型減税は景気過熱を通じてインフレ圧力を高め、米連邦準備制度理事会(FRB)をインフレタカ派方向に傾斜させる可能性が高いとみられます。 実際、イエレン議長は17日の議会証言で「利上げを先送りし過ぎると引き締めペースが早まる恐れがある」として、インフレやバブルへの対応が後手に回るリスクを指摘しました。そうした下では米金利上昇による日米金利差拡大が意識され、USD/JPYは上昇しやすいと判断されます。