似ているようで、ちょっと違っている レーガノミクスとトラポノミクス
レーガノミクスは再現されるのか。USD/JPYを予想する上ではマンデル・フレミングモデルに基づいた当時との比較が役立ちます。マンデル・フレミングモデルによると変動相場制下における財政出動は、第一段階としては景気刺激的となり実際に経済成長率を加速させますが、国内金利上昇(米金利)が通貨高(ドル)をもたらす結果、次第に純輸出が減少(輸出減・輸入増)するため、最終的には財政出動の効果が減殺されることになります。
気になるトランプ氏の保護主義的姿勢と景気の“伸びシロ”の小ささ
実際、当時の米国はそれに近い状況となり「経常赤字・財政赤字」が問題化し、最後は「プラザ合意」で円高ドル安に誘導されました。今回も向こう2年程度にわたってドル高となった後、米経済の打撃が深刻化することでUSD安方向に推移する可能性があるでしょう。トランプ共和党の保護主義的な姿勢が意識される可能性もあります。 一方、当時との相違点は、レーガン政権発足時の1980年代前半は失業率が高水準にあり景気の伸びシロはかなり大きかったのですが、それに対して今次局面は完全雇用に近く伸びシロが小さいことです。ドルの総合的な実力を示す実効レートも当時とは状況がことなります。レーガノミクス発動段階では低水準でしたが、反対に今次局面では13年半ぶり高値が始発点になっています。市場参加者がそこに注目すれば、そもそもドル高が進まない可能性もあるでしょう。また、今次局面ではドル高が進むと原油安が誘発され、新興国懸念が惹起される点も重要です。こうしたリスクオフの要因はUSD/JPYの上値抑制要因として認識しておく必要があります。 以上を踏まえ、USD/JPY(先行き12カ月)の見通しを113円に引き上げますが、2018年後半頃には再びUSD/JPYが下落基調に転じる可能性があるとみています。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。