相続登記を自分で手続きするには? 必要書類や費用、デメリットや注意点を解説
8. 相続登記を司法書士に依頼すべきケース
一言に相続登記と言っても、相続人の数や権利関係の複雑さによってその難易度は大きく変わります。以下のような場合には、司法書士に依頼するほうが安心です。 ・相続関係が複雑な場合 ・相続した不動産が未登記だった場合 ・急いで相続登記を完了したい場合 ・遠方の不動産について相続登記手続きを行う場合 ・相続人が忙しい場合 8-1. 相続関係が複雑な場合 亡くなった人が離婚と再婚を繰り返して異父(母)兄弟がいる場合や認知した子がいる場合、養子縁組や離縁をしている場合など相続関係が複雑な場合があります。兄弟姉妹が相続人になる場合で代襲相続(相続人が亡くなった人より前に死亡しており相続人の子が代わって相続人になること)が発生していると相続人の数も多くなります。 このような場合には戸籍謄本をしっかり読み込まないと法定相続人を間違えてしてしまう可能性があります。法定相続人の特定は、遺産分割協議や相続登記の前提として非常に大切なポイントです。相続関係が複雑な場合には戸籍謄本の取得から司法書士に任せたほうが良いでしょう。 8-2. 相続した不動産が未登記だった場合 2024年4月1日から相続登記は義務化されましたが、それまでは相続登記をするかどうかは任意だったため、長年にわたって相続登記がされていない不動産はたくさん存在します。たとえば、父親が亡くなって相続登記をしようと登記簿を確認したところ、何十年も前に他界した祖父の名義のままになっていたということも珍しくありません。この場合には、祖父から父、父から子という2つの相続登記を申請しなければなりません。 このようなケースは数次相続と呼ばれますが、父に兄弟姉妹がいる場合にはその兄弟姉妹(子からみると叔父や叔母)にも手続きに協力してもらう必要があります。登場人物が増えるぶん、必要な書類も増えますので自分で相続登記をするのはハードルが高いと言えます。 8-3. 急いで相続登記を完了したい場合 相続税の納税資金を工面するために相続した不動産を売却したり、不動産を担保に入れて銀行から融資を受けたりすることがあります。このような場合には、できるだけスムーズに相続登記を行う必要があります。 相続税は原則として故人が亡くなった日から10カ月以内に納税を行う必要があります。「買い手が見つかったけど、相続登記が終わっていないから契約ができない」「相続登記が完了しないと銀行が融資を実行してくれない」という事態が生じるかもしれません。売買や担保権設定を控えている場合には、相続登記の間違いや遅れが大きな影響を及ぼしますので、司法書士に依頼したほうが安心でしょう。 8-4. 遠方の不動産について相続登記手続きを行う場合 相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請しなければなりません。たとえば、札幌市にある実家の相続登記を東京に暮らしている相続人が申請する場合、東京法務局ではなく札幌法務局に申請する必要があるのです。 登記申請は前述のとおりオンラインでも申請することができますが、一般の方は申請書を法務局に直接持ち込むか郵送することが多いです。必要書類も申請書も一回で完璧に整えられることは少ないので、法務局とは何度かやり取りをすることになるでしょう。 直接出向くにしても郵送でやり取りをするにしても法務局が遠方にある場合には負担が大きいです。ほとんどの司法書士はオンライン申請に対応しているため全国どこの物件でも相続登記を行うことができます。まずは自宅や職場の最寄りの司法書士に相談してみましょう。 8-5. 相続人が忙しい場合 法務局の開庁時間は平日8時30分から17時15分までです。戸籍謄本などを取得する市役所や区役所も同様です。印鑑証明書など一部の書類はコンビニエンスストアで取得することもできますが、除籍謄本や改製原戸籍など市役所や区役所でないと取得できない書類のほうが多いです。 また、遺産分割協議書など相続人全員から署名や捺印をもらわなければならない書類もあります。ある程度時間に余裕がないと必要書類の準備から申請までを短期間で完結するのは難しいでしょう。 前述したように、令和6年4月1日から相続登記は義務化されました。忙しいからといって放置してしまうと過料を科せられる可能性もあります。そのため、無理に自分でやろうと思わず最初から司法書士に依頼したほうが良いかもしれません。