人間の「涙」で作るウイスキー、米ファイヤーボールが来年発売
唾液や髭を利用して作られたアルコール飲料も
涙入りのウイスキーというのは確かにユニークなアイディアだが、人間から採取された材料を使ってアルコール飲料を製造しようとしたブランドはファイヤーボールが初めてというわけではない。 かつてオレゴン州の醸造所であるRogue Ales(ローグエールズ)は、醸造長を務めるジョン・マイヤーの髭から採取した酵母でクラフトビールを醸造するという変わったやり方を用いたことがある。「Beard Beer(髭ビール)」と呼ばれるこのエールビールには、マイヤーの顔に生えた毛から発見された野生酵母菌が使われた。この菌株がたまたまビールの醸造に最適だったのだ。奇妙なことだが、この酵母がうまく働き、ほのかなスパイスと果実の風味が感じられる美味しいゴールデンエールを作り上げた。ローグエールズの実験は、型にはまらない醸造の原料にいかに可能性が秘められているかということを浮き彫りにした。 限界を押し広げようとすることで知られるもう一つのビール醸造所が、デラウェア州のDogfish Head(ドッグフィッシュ・ヘッド)だ。同社はトウモロコシの粒を噛んで作る「チチャ」という製品で、古代のビール醸造法を復活させたことがある。ペルーの伝統的な技法から着想を得て、ドッグフィッシュ・ヘッドの醸造家たちは紫トウモロコシを口の中で噛んで、でんぷんを分解する唾液酵素を分泌させるという工程を部分的に取り入れた原料からビールを醸造した。その結果、古代の儀式を現代のビール醸造の枠組みに取り入れたことで、粗野でほんのりと甘く、そして(殺菌した)人間の唾液が含まれたエールビールができあがった。 人間の体液ではないものの、カリフォルニア州のHangar 1 Vodka(ハンガーワン・ウオッカ)は、その「Fog Point Vodka(フォグ・ポイント・ウオッカ)」の製造において独創的な転換を図った。このウオッカは、カリフォルニアの海岸に立ち込める霧を集めた水を使用して作られた。持続可能性に向けた取り組みの一環として開発されたこのウオッカの製造過程において、Hangar 1は海岸に沿って霧を採取するネットを設置し、霧を含んだ大気を凝結させて水滴を作り出した。このプロセスはカリフォルニア州による節水の取り組みを支援するとともに、同州の独特な気候を人々に印象付けた。
Emily Price