「レンチン」なら調味料もいつもの3分の2に?「油少なめでも栄養やうま味を逃さない!」82歳料理家・村上祥子流<電子レンジ調理の秘訣>
◆日本の家庭料理を「レンチン」で! 好奇心旺盛な私は、なんでも試してみないと気が済まない。 電子レンジに夢中でした。 電子レンジ料理の本はアメリカで出版されたもの。 どうしても洋食が多くなります。 夫に「いつものご飯が食べたい!」と言われても、私は試作をやめません。 夫はついに、「電子レンジなんか捨ててしまえ!」と言い出す始末。 電気釜を捨ててしまった(!)過去を持つ彼に合わせて方向転換。 電子レンジを使ってご飯を炊く、ゆでる、蒸す、炒める、煮る、揚げるなど、一通りの日本の家庭料理ができるようになりました。 電子レンジは、食品の中の水分を電磁波が揺り動かして加熱する調理器具です。 ちなみに電磁波とは、空気中を流れる電気エネルギーのことです。 電子レンジの最大の特徴は、効率的に加熱できること。 食品100gあたり、600Wなら2分で加熱が完了。 食材の大きさではなく重量に応じた加熱時間を設定すれば火が通るので、ふぞろいな切り方でも大丈夫です。 また、食材の水分によって調理が行われるので油は風味づけ程度ですみます。 調味料は通常の3分の2で味つけができ、栄養やうま味は逃しません。 キッチンで「電子レンジ」を使うマニュアルを作り上げていきました。 それが思わぬことに結びついて、「電子レンジ調理の第一人者」と呼ばれるようになるのです。
◆糖尿病食を電子レンジで 1989年、私は公立大学法人福岡女子大学に非常勤講師の職を得ました。 私が受け持つ病態栄養指導講座は、糖尿病の予防・改善がテーマ。 病院食、治療食といっても特別なものではありません。 元を正せば家庭の食事です。 当時の糖尿病の治療食は、エネルギーは1200キロカロリーと極端なものがありました。 私は1600キロカロリーに設定し、その他の栄養素は過不足なしの摂取に。 これさえ守れば、和、洋、中華、エスニック風。 どの料理を食べてもよいのです。 患者さん用には家庭で1人分だけ調理すればよいのです。 ここでピン!ときました。 私が20年以上取り組んできた電子レンジの調理がぴったりなのです。 電子レンジはゆでる、蒸す、煮る、煮込む、焼く、ソテー、揚げるなどの調理が油控えめでもおいしくできます。 フライパンや中華鍋を使った料理に比べれば、油の使用量は5分の1程度。 レンジ料理は食材の持つ水分+調味料で仕上げますから、鍋でゆでる、蒸す、煮る調理と比べると栄養成分が多く残ります。 調味料は通常の3分の2ですみます。 あるテレビ番組の依頼で、食材も調味料も同じ条件の「肉じゃが」を電子レンジと鍋で作って、食品分析センターに依頼したことがあります。 電子レンジで作った「肉じゃが」は鍋の「肉じゃが」より、アミノ酸もビタミンも30パーセント多く残っていました。 家庭なら、家族分の食材をすべて切り揃え、患者さん用の1人分だけ耐熱ボウル(または耐熱皿)を使って電子レンジで調理することが可能です。 使う道具は耐熱用食器だけ。 後片付けも楽チン。