「レンチン」なら調味料もいつもの3分の2に?「油少なめでも栄養やうま味を逃さない!」82歳料理家・村上祥子流<電子レンジ調理の秘訣>
◆家庭内で継続できる治療食作り 糖尿病の治療食は、365日、3食作るわけですから、家庭内で継続できることが理想です。 電子レンジなら、家庭で糖尿病の治療食ができる!そう考えた私は、さっそく大学の講座で、電子レンジを使った糖尿病予防・治療食を教えることにしました。 ところが、当時大学にあったのはオーブンレンジ。 庫内は鋼鉄で囲われているため(電磁波は金属に当たると入角と同じ角度で跳ね返り食材内の水分に吸収されず)、普通の電子レンジの4倍時間がかかります。 仕方がないので、自前の電子レンジと耐熱ボウルを実習教室に運んで、学生に電子レンジの調理を教えました。 その後、私の話を聞いた大手家電メーカーから電子レンジ寄贈の申し出があり、調理台の数だけ電子レンジが準備されました。 そのおかげで学生たちは電子レンジの仕組みと使い方を習得し、夏休みの病院実習でも、体験入院の糖尿病患者さんに教えることができ、重宝がられました。 それを「祥子の家庭料理」という記事を週一回掲載していた西日本新聞社に行って話したところ、「電子レンジで祥子流」のコラムも誕生。 西日本新聞用の「電子レンジで祥子流」の記事が、講談社の資料課の目に留まり生活文化局局長に届けられます。
◆電子レンジで食育を 音羽の講談社に呼ばれて行くと、「『電子レンジで祥子流』を書いていますね。 だしを取ったり、お米を炊いたり、普通の家庭料理を電子レンジで作る。 男女雇用機会均等法の時代、個食化が進む今日、これは絶対に当たります。 石油の鉱脈を探し当てたようなものです」と、生活文化局長に言われました。 私はすっかり石油王になった気分。 すぐ執筆に取り掛かり、講談社から『電子レンジに夢中』を出版し、ベストセラーに。 その後もさまざまな出版社から電子レンジを使った料理本を上梓し、その数500冊を超えます。 「電子レンジで調理する」という考え方は、特殊なことではなくなりました。 子育てをしていた頃、私が台所にいると、「なに、作ってるの?」と、料理をする私の手元を見て、子どもたちはよく聞いていました。 「僕がサラダ作ってあげる」と、見よう見まねで野菜を洗い、塩を振って、酢と油をかけてお皿に盛りつけました。 まだ食育という言葉のなかった時代ですが、子どもと食について考えるきっかけとなったのがこの体験です。 ※本稿は『料理家 村上祥子82歳、じぶん時間の楽しみ方』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
村上祥子