焼肉業界“閉店ラッシュ”の中で「焼肉きんぐ」「牛角」2大食べ放題チェーンが堅調である理由
注文してくれると有難いメニューは?
食べ放題の品目の中でも、原価10%の商品もあれば70%の商品もある。メインの焼肉の中でも上牛タン、ロース、カルビは歩留まり率が低い。ハラミなどは原価が高く、これらに集中すれば店は収益的に苦しい。特に希少部位である牛タンは上価格帯の食べ放題でしか入れられないのが現状だ。 高原価の肉ばかり食べられると原価が高騰するから、他の一品メニューに分散させて原価率の安定に努める。ホルモン、キムチ、サラダ、わかめスープなどの低原価商品に誘導し、標準原価である38%程度を維持したいもの。そうやって、店もお客さんも双方が満足する良好な関係を維持しなければ店の存続は厳しい。 実際にお客さんだって、いくら焼肉の食べ放題を注文して、食べまくろうと気合を入れても、肉ばかりはそんなに食べられるものではない。また、和牛や国産牛を入れた上焼肉プランは店の儲けが一段と違う。上肉の証である霜降り肉は脂でしつこくなるから、量を食べられず、すぐにダウンしてしまう。
焼肉食べ放題は今後も堅調か
もともとは高級な食事だった焼肉。1991年、牛肉の輸入自由化を起点に、安価な牛肉が大量に市場へ出回り、一般大衆でも食べられる低価格を売りにした焼肉チェーンの参入が相次いだ。焼肉市場は、高級焼肉専門店とコスパを重視した低価格焼肉チェーンとの二極化が進展。 もちろん、中間層をターゲットにした店も独自性を発揮しながら工夫を重ね、存在感を訴求しており、焼肉市場は群雄割拠の状態で、各々が競い合いながら自店の存在価値を高めてきた。 現在の焼肉の市場規模は店舗数約2万2000店、売上規模約1兆2000億円と推計されている。冒頭で述べたように焼肉店の倒産件数は、過去最多ペースで推移しているようだが、牛肉を食べ慣れた世代が今も元気で、肉を好む肉食シニアとして存在感を発揮している。 食べ放題を安く提供できる合理的なオペレーションの確立と提供するサービスを拡充し、加えて、高品質・低コストの仕入れができるか否かが、栄枯盛衰の分岐点だろう。苦難が続く焼肉市場のなかでも、食べ放題チェーンは堅調な動きで推移しそうだ。 <TEXT/中村清志> 【中村清志】 飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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