牛肉高騰でインフレ気味の牛丼チェーンを尻目に…「かつや」「てんや」「なか卯」“和風丼チェーン”3社の現在地
提供に複雑性が増す天丼、かつ丼
かつ丼や天丼は牛丼のように、単純工程、単純作業で提供できるワンオペとは異なり、提供に複雑性が増す。その上、かつ丼は豚肉の高騰や物価の優等生であるはずの卵が高騰。天丼も、使用する海鮮類が高いだけでなく、天ぷらを揚げる油そのものも高値で推移しており、原価の負担が大きくなっている。 なかには2000円を超えるような高付加価値創造型のかつ丼もあり、そちらはインバウンド客に日本の本場のソウルフードとして大盛況で、これからも人気が絶えることはなさそうだ。 そのかつ丼や天丼を、牛丼と同程度の約500円の価格で提供するのは難しいはずだが、それを実現している各チェーンは顧客からの支持も高い。注文が入ってから揚げてくれ、揚げたての天丼やかつ丼は当然ながらおいしい。
親子丼のなか卯も存在感を発揮
その牛丼チェーンのなかで、唯一といっていい和食を前面に出しているのが、親子丼でおなじみの「なか卯」だ。1969年10月、手づくりうどん店として、大阪府茨木市に1号店をオープン。2001年に稼働店舗数200店舗を超えると、2010年3月に飲食大手ゼンショーの完全子会社となる。 ゼンショーグループのシステムを最大限に活用し、牛丼、親子丼、カツ丼、カレーのメニュー構成で運営し、特に看板商品である親子丼(並450円)には定評がある。和食のファストフードというカテゴリーの中で、存在感があるチェーン店だ。 創業時からのうどんをベースに業態進化と成長の基盤となった牛丼、親子丼やカツ丼、カレーなどの商品開発を強化し、なか卯を支える顧客基盤のさらなる拡大を目指してきた。店舗数は455店(2024年3月末日現在)となっている。アプリクーポンが週替わりで配信され、来店動機につながっており、さまざまな話題商品を積極販売しているようだ。
企業努力を重ねている各店に期待
飲食店の倒産が今後もさらに増えそうな中で、日常的に食べられる丼物は、他の業態に比べて需要が大きく変動せずに安定している。牛丼、かつ丼、天丼、親子丼など和食のファストフードは多忙な会社員には簡単に食事を済ませられるし、価格も安いから絶対的な人気がある。 食品スーパーの惣菜コーナーにも各種丼ものが陳列されており、競争も熾烈だ。各店が切磋琢磨しながら、品質と価格競争を展開し、しかもお客には選択肢も広がっているのが現状だ。厳しい外食を取り巻く環境下で、企業努力を重ねている各店の今後の成長に期待したい。 <TEXT/中村清志> 【中村清志】 飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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