90歳になった巨匠、ジョルジオ・アルマーニに6000文字の独占インタビュー。
ーーファッション界で何十年ものキャリアがありつつも、常に新しいことに挑戦されています。時代をキャッチアップする原動力はどこから来るのでしょうか?
もっとも難しいのは、誰にも真似できないシグニチャーを保ちながら、更新し続けることです。今の時代はスピード感を求められますが、長続きするクオリティー、ワンシーズンを経ても古くならないファッションというものがあると信じています。手軽に消費してすぐに忘れ去られる世界にあって、このビジョンを維持することは大変なことです。
ーー今は、どんなものにインスピレーションを感じていますか?
インスピレーション源は無数にあります。通りすがりの人、ひとつの仕草、ひとつのフレーズ、一本の映画、一枚の写真。アイデアが創作に結実する過程は予測不可能でわくわくします。それがこの仕事の素晴らしい点のひとつです。
ーーいちばん腹立たしく思うことはなんでしょう?
ファッションの世界で流行を受動的に受け入れて、魂のこもっていない反復作業に終始する怠惰な態度が嫌いです。私は、魂を込めて取り組む首尾一貫した態度を好みます。
ーー今年は五輪の年ですが、あなたはクリスティアーノ・ロナウド、デビッド・ベッカム、セリーナ・ウィリアムズらを起用しているほか、プロバスケットボールクラブのオリンピア・ミラノの会長でもあります。スポーツはお好きですか?
スポーツは好きです。人間性を高めてくれますから。何かを犠牲にして打ち込まないと結果は出ません。スポーツは深い感動と素晴らしい思い出を与えてくれます。特に記憶しているのは、私のバスケットボールチームの試合やブランド「EA7」、1982年と2006年のサッカーワールドカップでのイタリアチームの活躍です。私自身は、パーソナルトレーナーと1日1時間、トレーニングをしています。基本的には健康的な食生活ですが時には羽目も外します。それも大事なことです。
ーーそもそも、なぜファッションデザイナーを志したのでしょう?
ファッション界に足を踏み入れたのはちょっとした偶然からですが、すぐに気に入りました。最初、医者を志しましたが、自分には向いていないとすぐに気づいたのです。イタリアの老舗デパート、ラ・リナシェンテの仕事をしたことでこの世界に入り、そこからエキサイティングな道を歩むことになりました。ファッションを基軸に家具やインテリア、香水、化粧品、ホテル、レストランなどの他分野へ活動は広がり、今ではライフスタイルを全て網羅するようになりました。
ーー若い頃にラ・リナシェンテでショーウィンドウ・ディスプレーの仕事を始めた頃と今とでは、だいぶ変わりましたか?
あれはずいぶん前のことですからね。もう一生が過ぎました。あの頃と同じ自分ではもちろんありません。経験を重ねましたから。でも明晰な洞察力、周囲で起こっていることへの好奇心、アイデアを実現したいという願望、何事にも立ち止まらない姿勢は変わりません。年齢は単なる数字です。人は現実を直視できなくなった時や、身の回りで起きていることへの興味を失った時に老いるのです。そうした興味や意欲はまだまだあります。