「物流の2024年問題」について大江麻理子キャスターと一緒に深掘り!
「社会を体にたとえると物流は血流。滞ると日本経済や社会全体がゆらいでしまう」
アンケートでは、読者から心配の声も。 「ものが滞りなく流れ、届くことは今の日本社会の前提になっています。それが滞ってしまうおそれは、生活やすべての仕事に関わりますので、多くの皆さんが意識せざるを得ないのではないかと思います」 世界の中でも、ほぼタイムラグなくものが届く日本の物流網は奇跡的だと大江さん。 「その奇跡的な状況をつくり上げてくれている業界の方々には感謝しかありません。ただ、一方でそれは多くの方の長時間労働のもとに成り立っていた部分が大きく、サステナブルではないともいえます。すべての人が人間らしい生活を送れて、適正な対価を得られ、しかも利便性が高く効率がよいというのが理想の姿だとすると、まず変えるべき点はやはり働き方ではないでしょうか。物流という大事なインフラを支える方々の労働環境を是正する機会ととらえ、政府、企業、消費者の三者の努力が必要な局面だと思います。この問題に取り組むための様々な改革が、生産性を飛躍的に高めるきっかけになるかもしれません。再配達を減らすために、色々なものをまとめて一回で注文したり、置き配を選んだりと消費者ができる工夫もあります。置き配が心配な方もいるでしょうから、その場合はデジタルの力を使って確実に家にいる時間に届くよう設定する、家以外の場所でも荷物が受け取れるようにするなど、すれ違いをなくす仕組みもさらに必要かと思います」 読者が「物流の2024年問題」のニュースを見る際、持つとよい視点はありますか。 「社会を体にたとえると、物流は血流。どこかで血流が滞ると体全体に影響が出てくるように、物流がゆらぐと日本経済や社会全体がゆらいでしまいます。ですので、このゆらぎをなるべく減らすために『自分にできることって何だろう?』という視点や、『物流のゆらぎが一体どれくらい起こりそうか?』という状況をニュースでくみ取っていくことが重要ではないでしょうか。物流は社会の礎であり、前提なのだという視点でニュースを見ていただければと思います」
大江麻理子 おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。 撮影/木村 敦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2024年1月号掲載