サブカル文脈から読み解く2010年代以降のアイドルシーン、BERLING少女ハートとゆるめるモ!
メンバーも自我を解放することができる楽曲
Hamidasumo! / ゆるめるモ! 田家:ゆるめるモ!の2015年に発売になった2枚目のシングル「Hamidasumo!」。作詞作曲と編曲がハヤシヒロユキさん。POLYSICSのメンバー。 西澤:これはゆるめるモ!の中で、一番最初にガッツリとメジャーシーンの方とコラボした楽曲、シングル曲だったと思うんですけど、最初聴いたときすごい曲だなと思って。これかなりまた尖った曲ですねって大知さんに言ったら、「僕はものすごいポップで絶対売れると思います!」って自信満々に言ってらっしゃったのが、すごい印象に残ってますね(笑)。 田家:ははははは! この曲はあのちゃんが即興で弾いたギター・ソロが入っているっていうのも、今回知ったんですけど。 西澤:そうだったんですね。僕も初めて知りました。 田家:あのちゃんがこれだけ有名になったから、そういうふうに書き込まれるようになったんでしょうね。 西澤:基本的にメンバーがやりたいことをできるだけやらせてあげようとしていて。当時から、あのちゃんがギターを弾きたい、ライブをやりたいっていうことも実現させてあげようと動いていたり、献身的な動きをずっとされていたので、大知さんいてこその今のあのちゃんだと、近くで見ていた身としてはすごく思いますね。 田家:これも今回知ったのですが、10年間でフル・アルバム5枚、ミニ・アルバム8枚、シングル8枚、ベスト盤1枚、こんなに出しているんだと思いました。 西澤:多作の理由の1つとして、大知さんも楽曲を作れるというのはすごく大きいんじゃないかなと思いますね。 田家:さっきの「SWEET ESCAPE」は田家大知さんの曲でしたね。 西澤:当初は、アレンジメントで手伝ってもらったりというのがあったと思うんですけど、半年前くらいに久しぶりに取材させてもらったときには、もう編曲まで含めて自分でできるようになっていると。ただ、自分の世界だけになっちゃうので、できるだけ外の方の色も入れたいということを話されていましたね。 田家:今日の最後の曲です。 Only You / ゆるめるモ! 田家:ゆるめるモ!、2015年発売、3枚目のシングル『文学と破壊 EP』の中の「Only You」。 西澤:これはライブの一番最後の、ここぞというときにやることが多かったんですけど、生バンドでこれを演奏したりしていて。ダンスをするとか、そういう類の曲じゃないと思うんですね。歌わない部分も多くて、最後のサビで爆発するみたいな構成になっていて。そこでメンバーも自我を解放するみたいなことができる楽曲だったので。そういう意味で、何かに縛られるのではなく、自分を解放できるみたいなことが楽曲でも示されている曲だなと思っていて。それが象徴的な曲だなと思って、選ばせていただきましたね。 田家:ライブの回数はBERLING少女ハートもそうでしょうけど、ゆるめるモ!も主催ライブとか多いですよね。 西澤:そうですね。本当に多く、叩き上げ感はすごいありますね。 田家:しかも海外でやっている。 西澤:アジアにも行かれたりしていましたし。 田家:台湾になんで行っているんだろうなと思って、僕台湾でライブラリーCDを送ったりしているので、正月に来たときにそういう話をしたことがあって。そういう受け皿とかイベンターっているの?って言ったら、友だちだそうで。それで終わりました(笑)。 西澤:本当にいろいろな人と仲良くなるし、いろいろな人が協力したいって思うような太陽みたいな方です。 田家:あ、そうですか(笑)。 西澤:さらに今また海外に向けていろいろ取り組みされているみたいで、今後も楽しみです。 田家:はい、今週もありがとうございました。 静かな伝説 / 竹内まりや 流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。 先々週の話の中で、地下アイドルという呼び名は地下のライブハウスで活動しているからだったという話がありました。事務所もレコード会社もない中で自分の好きな音楽をやりたいってことで始めた人たちがいて、アイドルがそういう舞台になった。彼らに刺激を与えたのがももクロだった。そういう意味では今流れている竹内まりやさんも新宿ロフトの地下で始めたレーベルから世の中出ていったわけですから、やっぱりサブカル出身というふうに言っていいと思うんですね。自分たちではできなかった音楽をやってみたい、始めに音楽ありきだったんですね。売れるか、売れないかじゃなかった。 BERLING少女ハートもゆるめるモ!もそういう人がいて、その個人の情熱で始まった。それをサポートする媒体と言うのかな。配信側のOTOTOYというところにいたのが西澤さんで、BERLING少女ハートもゆるめるモ!もOTOTOYが配信することによって世の中に出ていった。そういう人がいなかったらこのシーンはできなかったということでしょうね。 そこからゆるめるモ!で言えばあのちゃんという人が登場して、世代を象徴するアイコンになってBiSHからはアイナ・ジ・エンドという人が出て、そういう人たちが出ていってもグループ自体は脈々と続いている。ゆるめるモ!というのはこの窮屈な世の中をゆるめたいということと、You’ll melt more! あなたももっと“溶けよう”ということと“メール”という言葉が掛詞になっているネーミングなわけですが、ゆるさがサブカルだったということだと思うんですね。実はアイドルは誰でも始めれるんだというハードルの低さ。情熱を持った人がそこにいた。それを支持する人たちがいて、そこにはビジネスも金儲けもあまり関係なかった。そこから始まったシーンがどう変わっていったのか、今どうなのかということが来週ですね。来週どうなるのかなと思いながら、お送りしようと思います。 <INFORMATION> 田家秀樹 1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。 「J-POP LEGEND CAFE」 月 21:00-22:00 音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストにスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。 OFFICIAL WEBSITE : OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765 OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO radikoなら、パソコン・スマートフォンでFM COCOLOが無料でクリアに聴けます! →
Rolling Stone Japan 編集部