カラオケガチ勢 vs 新導入"AI採点システム"の熱き戦い。歌のうまさとは!? それまでは高得点をたたき出していたのに......(涙)
橘 結局、安定性が大事ではあります。声の震えがなく安定して出せているかどうか。そこでボイストレーニングを受けている人とそうでない人との基礎的な違いが出てきます。 「精密採点Ai」を使ったテレビ番組を見ていると、スポーツをやっている方はボイトレをしていなくても高得点を出したりしますが、体を鍛えているからでしょうね。テクニックにこだわりすぎて安定性が損なわれると点数は伸びません。 Y寺 私がいろいろ考えて歌っても、Ai感性ボーナスはゼロで、スナックで横のおじさんが歌うと、高くない点数なのにボーナスが「3点」とかつくんですよ。 橘 評価基準をすべて出すと複雑になりすぎてしまうので、表には出していない要素もあるんです。これまでの結果、「精密採点DX-G」で100点を出せる人の特徴をまとめると、「正しい音程で歌える」「上手なビブラートを使える」「声が震えず安定した発声ができる」となります。 見た目には大きな変化はないですが、採点エンジンが強化され、これまで検出されなかったさまざまな歌唱技法が検出できるようになりました。それらを実現するためにAIが活躍して、Ai感性メーターやAi感性点として表現しているんです。 得点のために機械を研究する方がいるというのは開発者冥利に尽きますが、一度、難しく考えずに歌ってみてはいかがでしょうか。そのほうがさまざまな歌唱技法が加点されると思います。 Y寺 今日は文句を言うつもりだったのに、感動しました。機械にプログラムを入力して丸投げという勝手なイメージがあったんですが、人間に寄り添っていたんですね。 橘 そこだけは自慢というか、他社にはまねできないポイントだろうと自負しています。歌声に点数をつけるために膨大な時間をかけていますから。あとはユーザーの皆さんのさまざまな歌い方を繰り返し聴いて、覚えていく。その上で点数をチューニングするときに、たくさんのパラメーターを変えながら、試行錯誤しています。 メロディどおりに歌うことから始まった「精密採点」ですが、本当に上手に歌うためにはどうすればいいのか、機能を足していく必要があるとわかってきました。開発しながら、一緒に成長してゆく感じですよね。だから開発を重ねるほどに、いろいろなことを知って、さらにゴールが遠のいていく気もしています。 * * * 感じ入った様子で話を聞いていたY寺の瞳が、あやしく光った。 「ところで開発者である橘さんは100点を出せますか」 「100点は取れないですね。トレーニングする時間がなくて。最高は98点台です」 Y寺は「同じくらいですね」と、不敵に言うと「試しに歌ってみてもいいですか」とマイクを手にする。 選んだのは谷村新司の『昴-すばる-』。かつて「精密採点DX-G」で99点を出したことがある。