カラオケガチ勢 vs 新導入"AI採点システム"の熱き戦い。歌のうまさとは!? それまでは高得点をたたき出していたのに......(涙)
やや困惑気味の橘さんを前に、気持ち良さそうに歌うY寺。果たして採点は「91点」。肝心のAi感性ボーナスは......つかなかった。うなだれるY寺に、「いつもは店でお酒を飲みながら歌っているんでしょう? もっと伸び伸び歌えばいいだけですよ」と、橘さんは優しくアドバイスしてくれた。 ■音楽には力があるんです 「そもそも精密採点を始めたのは、歌がうまくなりたい人のために、カラオケを通じて改善点を伝えたかったから」と橘さんは言う。「自分はうまく歌えない」と最初から諦めている人が多いが、気づきがあって、そこを練習すれば誰でもうまくなれるし、歌うことが楽しくなるというのだ。 「音楽には力があると信じているんです。私自身、音楽をやっていて救われてきましたし、カラオケを通じてできることがあると思っています」 多くの人を熱狂させてきた「精密採点」には、開発者の愛が込められていたのだ。 「考えすぎず、か」。橘さんの話を聞いた帰り道、Y寺がつぶやいた。果たしてカラオケ自慢の彼は失った夜の信頼を取り戻せるのだろうか。 「編集部に戻ります」と、駅の階段を駆け上がっていったY寺。そのホームが会社とは違う方向だった気がしたのは、きっと見間違いだろう。 取材・文/矢内裕子 撮影/河合昌英