大阪・新世界の観光現状は? 通天閣社長「綱渡りの経営」人力車俥夫「耐えしのぐしかない」【#コロナとどう暮らす】
営業再開後は平日にアルバイト、一日稼働なしの日も
そして、6月に消毒液の設置など感染拡大防止策を講じた上で営業を再開したが客足は伸びず、土・日のみの営業を決断。平日は生計を立てるため、警備員のアルバイトをはじめ工事現場を中心に交通整理などの仕事で汗を流すこととなった。 「実は、ここのところ営業していても稼働は一日で一本あるかどうかでして。外国の方も減って。人力車はテンションが上がらんと乗らない乗り物。『よーし遊ぶでー』という観光客が少ない以上、厳しいのが現実ですね」と國領さん。この取材をした5日は、稼働ゼロで、國領さんは「僕と同じ坊主ですわ」と苦笑するしかなかった。
苦しい中でも続ける清掃活動、街の人情も支えに
しかし、そんな大変な中でも続けていることが一つある。それは、営業前の新世界清掃活動だ。2012年に新世界で人力車を曳くようになってから「使わせてもらう道路をきれいにしたい」という思いで自主的にトングとゴミ袋を手に始めたこの活動。 当初は一人でゴミ袋がいくらあっても足らないくらい大変な活動だったが、その行動に心を打たれ、それを一緒に手伝う商店主も現れた。そして、3年前には大阪市から日ごろの活動をたたえ「道路公園美化運動功労者市長表彰」を受けたこともある。 「いまは新世界に来る人も少ないかもしれないけど、やっぱり来られた方には新世界で気持ちよくすごしてほしいですね」と國領さんは笑顔で話しながら、ゴミ拾いに精を出す。 営業再開後の厳しい現実は続くが、地元の商店主らはそんな姿に「いつもありがとう」「ごくろうさま」とうれしそうに声をかける。 そして、営業再開後の厳しい状況のなか「うちの孫を乗せて」「知り合いを観光コースでよろしく頼むわ」と利用してくれる人もいた。こうした人情に、國領さんは「みなさん大変なのは同じやのに、本当にうれしい話です。地元・新世界に支えていただいてます」と話す。
「いまは耐えしのぐしかないですね」
そんな清掃活動を通じて、新世界の飲食店が閉店している現状も目の当たりにするのは辛いこともある。 特に、先の巨大ふぐ看板撤去により、自身の拠点の目印もなくなった。國領さんは「づぼらやの店員さんもいつも気にかけてくれて支えてくれた存在なのでショックは大きい。けど、これを乗り越え、耐えしのぐしかないですね」 いまは清掃活動中、観光スポット「通天閣」に掲げられている「明けない夜はない。マスクの下は笑顔で」の言葉に励まされながら、きょうも元気に人力車を曳けるよう奮闘中。そして、13日からは期間限定で新世界に近い、JR・南海、新今宮駅、地下鉄・御堂筋線動物園前駅、堺筋線恵美須町駅などの直行コースを500円で始めるなど、新たな形にも挑戦し、活路を見出していく。