消滅可能性自治体の逆いく流山市 少子高齢化を脱した秘密は市長のマーケティング戦略
――住環境をよくするためには、自然が重要だと思います。ただ宅地開発で沿線などの森が失われ、「都心から一番近い森のまち」なのに森が少ない状況になりつつある点はいかがですか? 私が引っ越してきたときには、TX開通にあたり、沿線の区画整備事業で森が切られることは決まっていました。市長になった後もどうにもできず、私の子どもがカブトムシを採った木も伐採されてしまいました。 ではこの状況で何ができるか。そこで取り組んでいるのが「グリーンチェーン認定制度」です。開発エリアの森や林はそのまま残すことはできない。しかし開発により少しでも緑を回復することは可能と考え、開発事業者に、開発の際に、接道面(沿道など)に緑地帯を設けていただくようお願いすることにしました。 例えば以前はマンション1階分ぐらいの、目隠し程度の高さの木が植えられていたところを、グリーンチェーン認定を受ける場合は5、6階までの高さの木にしてもらうことで、景観をよくしました。 この認定制度の前には、一戸建て、マンションともに木が一本もない開発が多かったのですが、現在では多くの企業などが協力してくれるようになり、18年間で60万本植えられました。建物は経年劣化しますが木々は経年優化します。 この制度は景観価値、環境価値が高まる策として、また、地球温暖化対策として、展開してきました。その結果、資産価値にも影響しているんです。グリーンチェーン認定されている建物は、認定を受けていない建物より中古販売価格が数百万から中には1千万円近く高くなっています。
――今後取り組みたいことは? 子育て政策に戻りますが、これまで保育園に関しては質より量の確保が優先されました。子育て政策が充実しているとはいえど、市民対象の調査で、満足していると感じる人は約7割。子どもはそれぞれ違うので、支援の仕方も異なることから数字が上がりにくいのはわかっているので、今後はきめ細かい支援策を立てていきます。 その一つが、障害のある子どもやその保護者への配慮です。2022年までは保護者が自分で保育園の入園先を見つける必要がありました。保育園によって空き状況や受け入れ態勢が異なるため、保護者が子どもの障害や配慮について直接保育園の担当者に説明し、その内容によって園から受け入れが可能か否かを示されます。 すぐに園が決まれば良いのですが、中には何園も断られることがあります。断られるのが何度も続くと、強いストレスが生じます。 保護者の負担軽減を図るべく、「要配慮児童保育コンシェルジュ」という制度を始めました。行政が保護者と保育園の仲介を行うもので、保護者は市と相談し、その後、市が保育園と相談するという流れです。2024年度から一部開始しています。 また、流山市民を対象に毎年行う調査では、「住み続けたい」と答えた人は91%にのぼっていますが、生きづらさを抱える市民にもきめ細かい施策を実施していきたいと思います。 そして流山市に住んでいてよかった、もっと住み続けたいという数字を増やしていきたいです。「住み続けたい」という人はすでに91%に達しているので、さらに上げていくためには、流山市民で生きづらさを感じている人を減らすため、市民に寄り添う行政を前進させます。そのために流山市はすべての市民に「住み続ける価値」の高い、良質なまちづくりを進めていきます。
長谷川菜奈