消滅可能性自治体の逆いく流山市 少子高齢化を脱した秘密は市長のマーケティング戦略
――税金の使い道として、市長になった当時と今で変化はありますか? 税収は、人口増や2018年に完成した日本最大級の物流センターなどにより、市長就任時の2003年と比べて市民・企業からの税収は8割増えました。 しかし支出も増えてます。高齢者と子どもの急増で、福祉や教育部門の支出が急増しています。この20年で約7倍になり、支出も倍増しています。 ――今の子育て政策を続けることで、今後もますます人口が増えるとお考えでしょうか? 現在、約21万2千人ですが、市民が快適に生活するためには、人口の適正規模もあります。市の人口推計では、人口増加のピークは2027年に来る予定です。ただし、国立社会保障・人口問題研究所の推計では24万人と予想されています。
――人口が頭打ちになると空き家の問題などが出てきませんか? 少子高齢化というのは不動産的には買い手市場になるので、土地を分割して小さな家をたくさん作るのは空き家を作るのと同じことになります。 流山市のまちづくりでは、量より質を優先する方針は、20年前から変わっていません。そこでマンションであれば、小さな部屋を300戸作るのではなく、最上階に大きめサイズの部屋、中階層にやや広めの部屋を作るなど専有面積の幅を持たせて作ってもらうように、事業者に協力してもらいながら進めています。 買い手の年齢層を変えることで、一気に同じ年代の人が高齢化せず、むしろ若者から高齢者までが同じコミュニティーで暮らすことができるからです。 また、今後、80代、90代の人が暮らす住宅が、相続物件として出てきます。そうした物件は比較的住環境がよく、広いので、やみくもに土地を分割せず、広い区画のまま市場に出してもらうように地区計画を策定し、若い方々に買ってもらうようにすると、空き家問題を防ぐことができると考えています。
――人口分布の変化でマーケティング戦略も変わりますか? 流山市はこれまで大規模区画整理により売らなければいけない土地があるためマーケティング戦略に基づき情報発信してきましたが、これからはブランディング戦略が鍵となります。流山のブランドである「都心から一番近い森のまち」や、「市民の知恵と力が活きるまち」など市民主体で色々なことができそうなまちだという流山ブランドを浸透させるんです。 流山市に住みたいという人を全国で増やし続け、売却物件が出てきたときに買い手がつけば、流山市に空き家は増えない。 ですから住環境を悪くしないということが大切です。楽しく美しい都市環境を作ること、そしてブランディング戦略を展開することでコミュニティーも地域経済も持続できる。そのために細かい施策にもこだわりながら、取り組みを進めているところです。