消滅可能性自治体の逆いく流山市 少子高齢化を脱した秘密は市長のマーケティング戦略
――保育所増設にあたって、住民から反対はありましたか? 流山は閑散としたまちだったので、土地の確保は難しくはありませんでした。しかし保育園が建設される前に住宅が建っているエリアでは反対意見もありました。 子育て政策をするのは、若い人を増やしたいからだけではなく、同時に高齢社会を支えるためだと説明し、ご理解を得てきました。結果的に、税収が増えたおかげで高齢者施設も増え、保育園だけでなく高齢者施設も充実した環境を実現しています。 ――市長就任当時から少子化が問題になっていました。子どもが少なくなると分かっていたのに子育て政策を打ち出すことに、市民や議会から反発はありましたか? ありました。議会でよく議論になったのは、「若い子育て世代に絞るのか」「税金は公平にするべきじゃないか」「今まで流山を支えてきた高齢者を大切にすべきだ」ということでした。でもそれは誤解ですね。子育て世代の方々に選んでいただける流山を作ろうと言っているのです。その結果、安心の長寿社会も実現できるのです。 実は親子三世帯が移住した事例もあるんです。数年前、流山市に住む姉夫婦を訪ねた妹夫婦が流山市を気に入り、そのまま移住したケースがありました。その姉妹のご両親は当時神戸に暮らしていましたが、流山市へ孫に会いにくるうちに流山が好きになり、ご両親も移住しました。 流山市のPRのメインターゲットは子育て世代としていますが、ご高齢の方もどの世代ももちろん歓迎です。
――政策を進める上で大変だったことはありますか? 人口構成や動態、市の外部環境の変化から、長期的な経営視点に立った市政における課題や問題が市役所の中で認識されていなかったことですね。 私はアメリカで鉄道やバスレーンなどの公共交通計画のための地域計画の事業を担当していました。実際に複数の鉄道計画案を作ってシミュレーションし、費用対効果の高いルート設定、20年、30年後のデータを基に問題がいつ顕在化するか、問題が顕在化しないためにどのように改善するかなどを調査し、計画を立てる仕事でした。 私が市長になる前にも、自分で洗い出した、将来的に大きな問題になりかねない課題を、当時の市長や執行部、議員などに説明したのですが、「TXが開通したら、すべてどうにかなる」との認識で、問題意識が全くありませんでした。 TXが開通したら、沿線11市区の地域間競争が始まることを、認識していなかったのです。 問題や課題を認識されていないと対策も取れません。私が市長就任後、人口動態や推計グラフを職員に作ってもらい、読み込むことで、今後の市政の問題を共有するようにしました。