ルネサスの第5世代「R-Car」、第1弾は3nm採用で最高レベルの性能実現
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2024年11月13日、車載SoC(System on Chip)「R-Car」第5世代品の第1弾となる「R-Car X5H」を発表した。 既存シリーズと第5世代R-Carファミリーの比較およびロードマップ。なお、今回のR-Car X5Hは第5世代R-Car SoCのハイエンド品で、今後ミドル、ローエンド品およびMCUも展開していく[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス ADAS(先進運転支援システム)、IVI(車載インフォテインメント)、ゲートウェイなど複数アプリケーションに使用できるマルチドメインSoCで、「業界最高レベル」(同社)の高性能を実現するとともに、TSMCの車載用3nmプロセス(N3A)の採用によって5nmプロセス採用品と比べ30~35%の低消費電力化も実現。同社は「業界初の3nmプロセス車載マルチドメインSoCだ」と説明している。2025年上期に一部自動車顧客向けにサンプル出荷を開始し、2027年下期に量産を開始予定だ。 ルネサスは同日、ドイツ・ミュンヘンで開催中の欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2024」において記者発表会を開催し、同社ハイパフォーマンスコンピューティング担当ジェネラルマネージャーを務めるVivek Bhan氏がR-Car X5Hの詳細を語った。
次世代の自動運転やIVI、ゲートウェイに対応
自動車業界では、従来の分散型アーキテクチャから、集中型コンピューティングとドメイン統合を組み合わせたアーキテクチャへの移行や、ADAS(先進運転支援システム)普及などが急速に進み、より高度なコンピューティングを実現するSoCの必要性が高まっている。また、複雑化が進むSDV(ソフトウェア定義自動車)開発では、車両の安全性を確保しながら演算性能、消費電力、コスト、ハードウェアとソフトウェアの統合を最適化する必要もある。Bhan氏は、「多くの自動車メーカーやティア1メーカーと話し学んだことは、『1サイズで全てに対応できるわけではない』ということだ。さまざまな顧客から、市場で求められるさまざまなオプション、仕様、ニーズがある」と説明。その全ての要望に応える柔軟性と拡張性を備えたコンピューティングプラットフォームが求められていることを強調していた。 同社は現在、自動運転やADAS、ゲートウェイ、IVIなど高い演算性能が問われる用途向けにはArmアーキテクチャを用いた64ビットSoCのR-Car第3世代および第4世代品を、車両内のさまざまな制御ドメインなど用には独自アーキテクチャ採用の16および32ビットMCU「RH850」第1世代およびU2xシリーズを展開している。第5世代R-Carは、これらロードマップを統合するもので、全てArmアーキテクチャで統一。「MCUからSoCまで、市場のさまざまなタイプのコンピューティングソリューションに必要な全製品を網羅する、完全にスケーラブルなラインアップを構築するもので、共通のスケーラブルなソフトウェアフレームワーク、ツールチェーンを備え、製品ファミリー全体で再利用が可能となる」(同氏)と説明している。