サウナやヨガで人気の赤外線療法、ホントに効果あるの? 専門家に聞いてみた
健康効果を裏付ける証拠
赤外線は単なる健康トレンドではない。医療にもさまざまな用途で使われており、その健康効果を裏付ける証拠も増えている。 米ヘンリー・フォード・ヘルスの皮膚科を率いるデイビッド・オゾグ氏によれば、複数のランダム化比較試験で、赤色光と近赤外線による育毛(米食品医薬品局(FDA)により承認)、傷の早期治癒、口唇ヘルペスへの効果が示されているという。また、赤外線は筋肉のリラックスと回復、線維筋痛症の緩和、さらには、心血管系への効果と関連づけられている。 その背景には、熱に対する体の反応がある。私たちの体は部位にかかわらず、温められると血流が増加し、栄養素や酸素が行き渡ると米アーカンソー大学医学部ロックフェラーがん研究所の教授ロバート・グリフィン氏は説明する。また、氏によれば、体温が上がると免疫機能が高まるという。 「温熱療法については広く研究されており、全身を0.5℃か1℃温めると免疫力が高まることが示されています。発熱を促すようなものです」 がんの治療には、高周波や超音波を使った局部的な温熱療法がすでに用いられており、複数の臨床研究によれば長期生存率が最大20%改善することが示されているとグリフィン氏は述べている。 精神医療の分野でも、赤外線は有望視されている。最新の研究では、赤外線サウナによる全身温熱療法と認知行動療法(CBT)の組み合わせで、うつ症状が統計的に有意に減少した。 うつ症状は高い体温と関連しており、赤外線サウナは発汗を促すため、体が冷えやすくなると、研究に参加した米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の精神医学准教授アシュリー・メイソン氏は説明する。 慢性的な疲労や痛みが赤外線療法で緩和したと話す患者もいるが、慢性的な痛みに関しては、赤外線に効果があると断言するのは早すぎるとタンカ氏は考えている。 「研究と治療では有望な結果が出ていますが、厳密な証拠が不足しています」 赤外線には「デトックス」効果があるとよく言われるが、これは根拠がない。一部の化学物質や重金属が汗に含まれることは確かだが、その量は解毒作用に大きな影響を与えるほどではないというのが専門家の見解だ。
赤外線を試すべきか?
一般的に、赤外線を使ったサウナやエクササイズ教室は、ほとんどの人にとって安全だ。それでも、特に妊娠中の人や脱水症状を起こしやすい人は、まず医師に相談すべきだ。また、科学研究で得られた結果は、温度や時間などの要素が異なる状況には必ずしも当てはまらないことを覚えておいてほしい。 「ぴったり研究の通りにはいきません」とグリフィン氏は話す。「そのため、たとえ赤外線サウナに行っても、実際にどれくらいの温熱が体に届いているかはわかりません」
文=Hilary Achauer/訳=米井香織