大規模言語モデルによる財務/経理タスクの自動化、購買発注書の確認作業を97%の精度で実行するStampliのテクノロジー
LLM活用のインパクト、StampliのCognitive AI、購買発注書確認作業を自動化
既存の機械学習やAI技術に加え、大規模言語モデル(LLM)が財務部門の課題解決にどのように貢献するのか、Stampliが2024年9月に発表した「Cognitive AI」がその答えを示してくれそうだ。 Cognitive AIの最大の特徴は、LLMと緻密に構築されたビジネスロジックを組み合わせた点にある。これにより、経験豊富な会計専門家の複雑な推論と意思決定能力を模倣することが可能になった。 StampliのフェルドマンCEOは「Cognitive AIは、熟練した経理担当者と同じように、複雑な財務シナリオを考え、推論することができる。この水準の人間の能力の再現は、財務ソフトウェアでは前例がない」と語る。 Cognitive AIの威力が最も発揮されるのが、購買発注書(PO)マッチングの自動化だ。POマッチングは、請求書とPOの内容を照合する作業で、従来は財務部門の人員を多く割く必要があった。POと請求書の行項目は数十から数百に及ぶことがあり、不一致も日常的に発生する。説明、数量、価格の不整合、単位タイプの不一致、欠落した配送情報、複数の配送にまたがる行項目の分割、さらには税金、運賃、クレジット、割引、リベートなど、様々な変数が絡む。これらの不一致を解決するには、慎重な調査が必要となるのだ。 従来のPOマッチングツールは、単純なデータマッチングに依存し、その成功率は20~40%に留まっていた。一方、Stampliが実施したCognitive AIのテストでは、97%の成功率を達成。実際の使用データが蓄積されれば、この数字は100%に近づくと同社は見込んでいる。 実際の導入事例でも、その効果は顕著だ。サウスカロライナ州フォートミルのSuperior Masonry Unlimited社でCognitive AIを使用したところ、当日に届いた22件の請求書の各行を100%マッチング。5件の請求書は3ページに及ぶものだったが、すべてを完璧にマッチングした。これらの請求書の確認にかかった時間はわずか15分。手作業で処理する場合に比べて大幅な時間削減を実現したという。別の事例では、請求書処理のために5人の追加雇用が必要だったところ、Cognitive AIの導入により、追加雇用の必要がなくなったと報告されている。 Cognitive AIの登場は、深刻な人材不足に直面する金融・保険業界にとって、まさに時宜を得たものだといえるだろう。冒頭でも触れたが米国労働統計局の2024年8月のデータによると、同業界では27万件の求人に対し、採用は15万7,000件に留まっている。
文:細谷元(Livit)