大規模言語モデルによる財務/経理タスクの自動化、購買発注書の確認作業を97%の精度で実行するStampliのテクノロジー
AIによる自動化最前線、Stampliのテクノロジー
業務の複雑化と人材不足に直面する金融・財務部門にとって、AIによる自動化は救世主となり得るのか。この分野で注目を集めているのが、米国のスタートアップ企業Stampliだ。 Stampliは2015年の創業以来、AI駆動の請求書処理に特化したソリューションを提供してきた。同社のCEOであるエヤル・フェルドマン氏は、「AIが会計部門の課題に完璧に適合すると認識し、AIを当社のビジョンと製品戦略の中心に据えた」と語る。 Stampliの特徴は、AIを製品の付加機能としてではなく、エンジンとして組み込んでいる点にある。同社のCTOであるオファー・フェルドマン氏は、「Stampliのデータウェアハウス、ユーザーワークフロー、さらには内部の製品開発およびエンジニアリングプロセスまで、すべてがAIの性能を最大化するように最適化されている」と説明する。 この戦略が功を奏し、Stampliは現在、年間800億ドル(約11兆8,000億円)以上の請求書処理を1,600社の顧客に提供している。同社の強みは、10年近くにわたるAI開発の経験にある。同社のAIは「ビリー・ザ・ボット」という愛称で親しまれており、ユーザーからも高い評価を得ている。 Stampliの技術的特徴の1つは、継続的な自己学習能力だ。ユーザーが行う調整や修正から学習し、顧客固有のプロセスに合わせて常に調整を行う。さらに、顧客のプロセスが変更された場合も、追加のプログラミングなしで学習し、変更に対応できるという。 同社の成長は投資家からも高く評価されている。2023年10月には、ブラックストーンが主導する6,100万ドル(約902億円)のシリーズD資金調達ラウンドを完了。これにより、同社の調達総額は1億4,800万ドル(約2,190億円)に達した。 Stampliの成功は、AIによる自動化が財務部門の課題解決に大きな可能性を秘めていることを示している。しかし、同社のアプローチが示唆するのは、単にAIを導入すればよいわけではなく、業務プロセスの深い理解と継続的な改善が不可欠だという点だ。金融・財務部門のデジタル化を目指す企業にとって、Stampliの事例は重要な示唆を与えているといえるだろう。