大学間で大きな格差!入試で問われる、障害のある受験生への「合理的配慮」義務とは?
障害のある人が行政や民間のサービスを利用する際の「合理的配慮」が、2024年4月から民間事業者にも義務付けられた。大学も受験生や在校生に合理的配慮義務を負う。特に大学入試では、多様な障害のある受験生に対してどのような配慮が求められるのか。障害のある受験生の入試に関する大学の取り組みを、長年にわたって調査する一般社団法人 全国障害学生支援センター代表理事の殿岡翼氏に、その現状と課題について聞いた。(アロー教育総合研究所 所長 田嶋 裕) 障害のある受験生や在校生への「合理的配慮」で高い評価を得る広島大学
障害のある受験生への「合理的配慮」が義務化
2024年4月、「障害者差別解消法」が改正・施行された。同法は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害や高次脳機能障害を含む)などの障害のある人々が、行政機関や民間事業者のサービス利用において不当な差別を受けることを禁じるとともに、行政機関には利用における「合理的配慮」を義務付けるもの。今回の改正で合理的配慮義務の適用範囲が、民間事業者にも拡大された。 これによって、国公立大学に加え、私立大学にも学生の学習や研究・生活環境はもちろん、入試の際に、障害のある受験生が障害を理由に不利を被らないための環境を確保する義務が課せられた。多様な学生の受け入れ拡大という視点で見れば、合理的配慮の具現化は入試改革の重要課題の一つといえるだろう。 イメージとしては、視覚障害のある受験生のために入試問題を点訳したり、聴覚障害のある受験生の補聴器使用を認めたりするといった配慮がまず浮かぶだろうか。だが、実際はもっと複雑だ。一見しただけでは周囲が気づきにくい障害がある人も多く、症状が出る環境やきっかけ、重さも人によって大きく異なる。 例えば、背後に人がいると極度の不安を感じる、一定時間を超えると集中力を持続できないといった、精神面での障害を抱える受験生も多い。さらに、視覚や聴覚・肢体障害と精神障害の両方がある受験生もいる。一口に「合理的配慮」と言っても、決まった型に当てはまる共通の基準などは作り得ない。また、入学者選抜への考え方、保有する施設や人材などのリソースによっても、合理的配慮の内容は大学ごとに異なる。 なお、大学入学共通テストに関しては、大学入試センターが公表している「受験上の配慮案内」を参照していただきたい。障害とその程度によって、例えば「点字解答」「代筆解答」のほか、「試験を受ける座席の指定」「試験時間の延長」「試験室における介助者の配置」などの項目が挙げられている。だが、配慮申請の審査によって不許可となる項目もあること、共通テスト後に受験する志望大学の入試では、改めて大学ごとに申請が必要な点には留意しておきたい。