デジタル時代に生き残る「 たまごっち 」の物理的な存在感。28年間愛され続ける理由と新たな戦略
宇宙から地球に落ちてきたヘンテコな生き物『たまごっち』──。1996年11月23日に誕生したこの商品は、28年間にわたり、単なる玩具を超えた携帯育成デジタルペットとして世界中で愛され続けている。 デジタル時代に生き残る「 たまごっち 」の物理的な存在感。28年間愛され続ける理由と新たな戦略 バンダイのメディア部プロデュース第三チームに所属する佐藤公彦氏は、『たまごっち』のIPプロデューサーに就任以降、ライセンス活用を強化してきた。同氏は、「ライセンスを活用して商品展開を立体的に広げていけば、持続的な露出を維持できる」と語る。 企業の成長につながった施策や事業を切り口に、そこに秘めたマーケターの想いや思考を追っていくDIGIDAY[日本版]のインタビューシリーズ「look inside!─マーケターの思考をのぞく─」。今回はバンダイの佐藤氏に、『たまごっち』のライセンス戦略や守り続けている世界観などを聞いた。 ◆ ◆ ◆
持続的な露出を目指しライセンス活用を拡大
DIGIDAY編集部(以下、DD):『たまごっち』はバンダイの自社ブランドとして、息の長い活躍を続けていると思いますが、最近はとくに他ブランドとのコラボやグッズの拡大などで目にする機会が増えています。現在のブランド戦略はどのようなものでしょうか? 佐藤公彦(以下、佐藤):現在の『たまごっち』は、玩具としてだけでなく、ライセンスビジネスとしても大きな役割を果たしています。たまごっちのキャラクターを使ったガシャポンや食玩、生活雑貨など、本体以外のグッズも含めてビジネスが急成長中です。 『たまごっち』は自社IPなので、社内が納得すれば自分のアイデアを比較的自由に実現できるんです。私が担当になってからは、自分らしさをどう出すかを考え、リブランディングとライセンスの強化をはじめました。 佐藤 公彦(さとう きみひこ)/新卒で大手総合機械製造企業に入社し3年間勤務したのち、憧れていた玩具業界への転職を志して2009年にバンダイに中途入社。新規事業室、ボーイズトイ事業部、BANDAI UK LTD.などを経験。仮面ライダーやガンダム製品などのマーケティングや、妖怪ウォッチシリーズの企画と番組のプロデューサーなどを担当した。2022年4月より、たまごっちのプロデュース担当に就任。プライベートでは、自宅の購入とともに保護猫の姉妹を2匹引き取り溺愛中。名前は「胡麻(ごま)」と「胡桃(くるみ)」。2匹同時に引き取った理由は「寂しい思いをしてほしくない」から。 DD:バンダイの本来の強みであるライセンス事業の知見を上手く活用しているということでしょうか? 佐藤:そうですね。当社の強みのひとつは、ライセンスを取得した際に玩具やガシャポン、食玩、生活雑貨、カードやプラモデルなど、単にひとつのジャンルだけで展開するのではなく、生活のさまざまな場面に広げられる点です。自社コンテンツでそのような展開ができる土壌が整っているのは、非常に大きな強みとなっています。 私がプロデュース担当となる前まで、意外にも『たまごっち』のライセンスの活用はあまり進んでいなかったんです。そこで、ライセンスを活用して商品展開を立体的に広げていけば、持続的な露出を維持できると考えました。つまり、もともとあるリソースをもっと活用したいと思ったのが、ライセンス事業を進めようと考えたきっかけです。 DD:現在のマーケティングにおいて、人気IPを保有していることは強力な武器でもありますよね。 佐藤:はい。『たまごっち』と言えば、たまご型の玩具を連想する人が多いですが、実はその中には1200体以上のキャラクターが存在しています。このキャラクターたちをもっと知ってもらい、世界観も含めて好きになってもらえれば、たまごっち本体だけでなく、IP全体の広がりにもつながります。そうした要素も、ライセンス事業の拡大が期待できると考えたポイントでした。