デジタル時代に生き残る「 たまごっち 」の物理的な存在感。28年間愛され続ける理由と新たな戦略
変えたこと、変えなかったこと
DD:腕時計型の「Tamagotchi Uni」のような商品も出ていますが、基本的な形は守られていますよね。リブランディングを進めるなかで、変えた部分と変えなかった部分は何ですか? 佐藤:たまごっちがどんな形になろうとも、「たまごの形」「3つのボタン」「四角い画面」は変えてはいけない部分です。これらは初代から引き継がれてきた、たまごっちのアイデンティティと言えます。 一方で、変えてよかった点としては、最近機種「Tamagotchi Uni」ではWi-Fi機能を取り入れるなど、現代のトレンドを反映させた仕様を加えている点ですね。2004年の2回目のブームのときには、赤外線通信やiモードとの連動機能などを導入しました。多機能なデバイスのなかに移植するのではなく、『たまごっち』というデバイス自身に、必要な機能を追加しています。 DD:では、『たまごっち』が生活者に提供できる価値を佐藤さんはどのように考えていますか? 佐藤:『たまごっち』は命・生き物のような難しいテーマを、教育的にではなく楽しい体験として伝えられるものだと考えています。子供のころに遊んだ記憶が残り、それが楽しい思い出になる。そういったことを伝えられる幸せな玩具ではないでしょうか。 バンダイは「ものづくり」の会社なので、物理的なものを手に取ってもらうことを大事にしています。エンターテイメントの領域でもデジタル化が大きく進むなか、どれだけ「物」としての価値を残せるかが重要だと感じています。 DD:最後に、『たまごっち』の今後の展開を教えてください。 佐藤:バンダイではワールドワイド戦略を進めており、少しずつ世界でのプレゼンスを伸ばしていこうとしています。『たまごっち』は米国やヨーロッパでもヒットしたという実績があり既に土壌は整っていますが、まだまだプレゼンスを発揮しきれていないアジアへの注力も計画中です。国内だけでなく海外にも積極的に商品展開していく動きと平行して、ライセンスも各国に向けて展開強化をしていきます。 文/蔵西隆介、企画・インタビュー/島田涼平(DIGIDAY JAPAN) 写真/中山実華
編集部