郵便物破裂事件から1年余り 名古屋で「表現の不自由展」再び
2019年に愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で「反日的な展示だ」として物議を醸した企画展「表現の不自由展・その後」の作品などを再展示する展覧会が25日、名古屋市中区の市民ギャラリー栄で始まる。昨年7月にも同じ展覧会が同会場で開催されたが、ギャラリー宛ての郵送物が破裂する事件が起こり、6日間の会期のうち4日を残して中止された。その再開という位置付けで、28日までの4日間の開催を目指す。
市民有志が市側と話し合い重ね再開
市民有志でつくる「『表現の不自由展・その後』をつなげる愛知の会」が主催。あいちトリエンナーレの企画展実行委員会のメンバーらと連携して、「私たちの表現の不自由展・その後」と銘打ち、名古屋での再展示を企画した。 会場は昨年と同じ中区役所があるビルの8階フロアの展示室。24日の報道関係者向け内覧会では、日韓の慰安婦問題を象徴する「平和の少女像」をはじめ、昭和天皇をモチーフにした版画作品「遠近を抱えて」や、天皇の写真を燃やすシーンが含まれる映像作品の「遠近を抱えてPartⅡ」を映し出すモニターなどが並ぶ会場が公開された。昨年はなかった若手作家の作品や、この1年間の市民運動を記録した写真なども展示されている。 会の共同代表の久野綾子さんは「昨年は開催したとたんに中止となり、悔しさや怒りなどさまざまな思いがこみ上げた。でも、市側と安全にやるためにどうすればいいのかをよく話し合い、再開にこぎ着けられた。警備や荷物検査は厳しくなるが、怖くて近寄れないという雰囲気にはしたくない。一人でも多くの人に見てもらい、実際の作品からそれぞれに感じてもらいたい」と話した。
警備に万全期すも会場前には早くも街宣車
ギャラリーを運営する名古屋市文化振興事業団によると、展示に抗議する電話やメールは既に複数届いている。24日も会場ビルの前で「展示を止めよう」とアピールする街宣車やビラを配る人の姿が見られた。会期中は警察と協力して、安全確保に万全を期するという。 入場は各回50分の完全予約・入れ替え制。一般500円、高校生以下と障害者は200円。予約は購入サイトから。 同様の展覧会は今年に入って4月に東京、8月上旬に京都で開かれており、9月10~11日には神戸市内での開催も予定されている。また、愛知県内では現在、トリエンナーレの後継イベントとなる「国際芸術祭あいち2022」が10月10日までの予定で開かれている。 (関口威人/nameken)