<安保法制>自民党・岩屋毅議員に聞く「戦争法案ではなく戦争回避法案だ」
THE PAGE
安全保障関連法案の審議が続くなか、4日に行われた衆院憲法審査会で、自民党推薦を含む憲法学者3人全員が法案を「憲法違反」と指摘した。政府は、違憲の指摘は当たらないと反論するが、野党は法案への反発を強め、政府・与党が目指す法案成立の予定はずれ込む可能性が出てきた。そもそも、なぜ今、政府・与党は安保法制の成立を目指すのか。「集団的自衛権の行使容認」は憲法違反にはあたらないのか。そして、法案は、日本が戦争にまきこまれる可能性を高める「戦争法案」なのか。安保法制の与党協議の中心的メンバーで、自民党の安全保障調査会副会長の岩屋毅・衆議院議員に話を聞いた。(なお、インタビュー動画は、ページ内の動画プレイヤーからご覧いただけます)
安全保障法制の狙い
── 安全保障関連法案の法案、そもそもの狙いは? 岩屋:一言で言うと、平和安全法制は危機管理法案なんですよね。法案の中になんとか事態、なんとか事態といくつか事態が出てきますが、それらがすぐさま起こることを考えているわけではないです。むしろ起こる蓋然性というのは非常に低い。 ただ、危機管理に想定外は許されません。これまでの安保法制の中の「切れ目」や「穴」を今回の法整備できちんと埋めて、つないでおきましょう、と。万が一、わが国の安全が脅かされ、国民の生存権が脅かされるようなときに、その手段がない、法律に書いてないからできない、とはならないようにしよう。これが狙いの1つですね。 2つめは、日米同盟を強化し、アメリカだけではなく、友好国との安全保障協力を進めていくことです。今までより、自衛隊がもう少し後方支援で手伝えるようになるとか、日頃の警戒監視のときに米国の船も守ることができるようになるとかです。やれることが増え、作戦計画、訓練計画が変わる。それに基づいてしっかりと訓練をする。それを世界が見て、「ああ、日米同盟はしっかりしてきたな、日本の守りは今まで以上に固まってきたな」と思う。これが抑止力で、紛争を未然に防ぐ力なのです。 要するに、まさかの時のための危機管理法案として備えつつ、同盟国や友好国との連携による日本の抑止力を強化すること。これが平和安全法案の目的です。 ── 危機に対処するということだが、具体的にはどんな危機を想定していますか? 岩屋:もともと、日米ガイドラインを作り、周辺事態法を作ったときに想定してた事案は、朝鮮半島有事です。実際にあのときは、一触即発、北朝鮮が暴発するかもしれないという緊張した事態がありました。朝鮮半島で有事が起これば、当然わが国にも火の粉が降ってくる恐れがある。だから、備えとして、米軍を後方支援するための法律や取り決めが必要だとの認識で、最初の日米ガイドラインと、周辺事態法を作ったわけです。今でも、最も心配すべき、日本の安全を脅かしかねない事態というのは朝鮮半島有事でしょう。 ── 報道によれば、自民党が作った国民向けに安保法制を説明するビラでは、中国の脅威が強調されています。 私は、外交上の配慮ということもあって、地域の名前や国名を挙げるというのはあまり適当なことではないと思います。中国は大事な隣国ですし、ようやく首脳会談も再開できたところですから。 まあ、客観的事実として言えば、中国は公表された分だけでも、現段階で日本の防衛費の3倍を使っています。おそらく4倍、5倍はあるのではないか。過去24年で見ると、中国の国防費は40倍になっている。おそらく世界史上、これだけのスピードで軍拡をした国は他にないのではないか。さらには、国籍不明の航空機が日本の防空識別圏に入ってくると、自衛隊がスクランブル発進するわけですが、これが過去10年で7倍に増えて、半分ぐらいは中国の航空機となっています。 わが国固有の領土である尖閣には、毎日、中国の公船が近づき、2日に1回ぐらい領海侵犯をしているという深刻な状況です。これは決して中国の悪口ではなくて、客観的な事実ですよ。中国の急速な軍拡や執拗な海洋進出によって、日本を取り巻く安全保障環境は急速に変わってきているのです。