なぜ18人のサッカー東京五輪代表にサプライズがなかったのか?
たとえばブラジルは五輪連覇を狙う東京大会に臨む18人を先に発表したが、コパ・アメリカに参戦中の東京五輪世代、20歳のFWヴィニシウス・ジュニオールは含まれていない。コパ・アメリカ代表から外れた20歳のFWロドリゴとともに、所属するレアル・マドリードの意向が大きく働いたと報じられている。 オーバーエイジには38歳の元代表、DFダニエウ・アウヴェス(サンパウロ)が招集されたが、出場を熱望していたFWネイマールは、シーズンオフの期間が短くなる状況を危惧したパリ・サンジェルマンが派遣を拒否したとされている。 ブラジルと同じ状況はアルゼンチン、ユーロ2020を戦うフランス、スペイン、ドイツにもあてはまる。韓国もアジアのナンバーワンストライカー、孫興民(トッテナム・ホットスパー)をオーバーエイジで招集するプランがほぼ頓挫したと報じられた。 東京五輪に対する参加各国のこうした動きに対して、A代表でも不動のレギュラーである3人をオーバーエイジとして招集。守備をしっかりと固めた上で、攻撃陣を中心にすでにピッチ内外で若い選手たちがポジティブな影響を受けはじめているU-24代表の現在地が、反町委員長をして「一歩リードしている――」と言わしめた。 もちろん、それだけで勝てるほど簡単な舞台ではない。スタッフにはフィジカルコーチとして矢野由治氏に加えて、A代表を担当していた松本良一氏も加えた。異例の2人体制とした意図を、反町委員長はグループリーグ初戦から準決勝までの5試合をすべて中2日で、日本の夏特有の高温多湿の条件下で戦う過酷な日程に帰結させた。 「コンディション調整がかなりカギになる、と考えての選出だと思ってもらえれば」 コンディション調整が不可欠となる選手は、暑熱対策が必要なヨーロッパ組だけではない。ウズベキスタンおよびタイで集中開催されているACLのグループリーグを戦い終えた後の、7月初旬から中旬にかけてU-24代表に合流する予定の三笘や旗手、相馬、バックアップメンバーのDF瀬古歩夢(セレッソ大阪)も対象に含まれてくる。 グループリーグ突破へ大きなウエートを占める、7月22日のU-24南アフリカ代表との初戦(東京スタジアム)までちょうど1ヵ月。日本が獲得した唯一のメダル、1968年メキシコ大会の「銅」を越える手応えを問われた指揮官は短い言葉に自信を凝縮させた。 「確実に前進できていると思っています」 サプライズなしは、イコール、最強布陣である証。陣容が固まったU-24代表は静岡県内で予定される7月5日の始動へ向けて、ヨーロッパ組は引き続きつかの間のオフを取りながら、国内組は残されたJ1リーグ戦を戦いながら大舞台への英気を養っていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)