なぜ18人のサッカー東京五輪代表にサプライズがなかったのか?
「ホームの地で戦えるメリットも十分に生かしてもらいながら、金メダルを目指すという言い方しかここでは言及できません。ノルマというものにとらわれずに、思い切りチャレンジして、上へ上へと進んでいってほしい」 グループリーグで敗退した前回リオデジャネイロ大会では、ヨーロッパ組がMF南野拓実(当時ザルツブルク)と、メンバー発表後にサンフレッチェ広島からアーセナルへ移籍したFW浅野拓磨だけだった。FW久保裕也も登録メンバー入りしていたが、所属していたヤングボーイズの事情で開幕直前になって辞退を余儀なくされた。 国際サッカー連盟(FIFA)の主催大会ではない五輪では、前回大会の久保に象徴されるように、各クラブに選手を派遣する義務が生じない。一転して、今回9人のヨーロッパ組を招集できた要因を、反町委員長は「失敗から学んだ大きな前進」と位置づけた。 「五輪は特殊な大会で、ヨーロッパでは次のシーズンに向けた準備期間に行われる。それを踏まえると、海外クラブとの折衝は常に難しくなる。そうした状況で日本協会としてヨーロッパに拠点を置き、そこを窓口として各クラブに事前に『よろしくお願いします』とレターを送り、しっかりと返事をもらっている。足繁く通い、頭を下げてきた努力で、ヨーロッパ組が多くなっても意図するチーム作りができたと感謝しています」 反町委員長もU-23代表監督として、2008年の北京五輪で指揮を執った。しかし、ヨーロッパ組で招集できたのはMF本田圭佑(当時フェンロー)とFW森本貴幸(当時カターニャ)だけで、オーバーエイジにいたっては国内組を含めて招集できなかった。 グループリーグを3戦全敗で終えた苦い経験があるからこそ、ドイツ・デュッセルドルフを拠点に日本人選手が所属するクラブと強い信頼関係を築き上げてきた、元日本代表の藤田俊哉氏をはじめとするヨーロッパ駐在強化部員の尽力に感謝した。 母国開催の五輪という特殊な背景も、久保の保有権を持つレアル・マドリードをはじめとする各クラブへの説得材料になったはずだ。さらに2018年から活動してきたヨーロッパ駐在強化部員が積み重ねた努力で、オーバーエイジをこれまでの五輪直前ではなく、6月から東京五輪世代と融合できた価値は大きい。反町委員長が続ける。 「6月の活動でオーバーエイジを入れて、実戦を行ったケースはあまりないと認識している。なので、私たちは現段階で(他国を)一歩リードしていると勝手に思っています」 ヨーロッパではユーロ2020が、南米ではコパ・アメリカ2021と大陸選手権がたけなわで、続けて開催される東京五輪代表を兼ねる選手はほとんどいない。