ラクダをめぐる冒険~リヤド(中編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■おどろくべき食事情、そして...... 私の経験上、こういう類の会議のビュッフェは、欧米の国々でなくとも、西洋スタイルにおもねることがほとんどである(オムレツとかクロワッサンとかホットケーキとかウインナーとか)。日本でも韓国でもフィリピンでもタイでも、大抵がそうである。 この出張でいちばん驚いたのは、ここにはそのような姿勢がすがすがしいくらいに微塵もないことであった。つまり、会議の合間に提供されるランチも、ホテルで提供される朝食も、中東料理しかないのである。 たとえば、日本でマリオットやヒルトンのような欧米のチェーンホテルに泊まったことを想像してみてほしい。これはたとえるなら、そこの朝食ビュッフェに和食しかない、というような状況である(ちなみに、このとき私が宿泊したホテルはハイアット系列のホテルだったが、そこの朝食ビュッフェも100%中東料理だった)。2019年まで観光客を受け入れていなかったということだから、「欧米文化の流入を頑なに拒んでいる」というよりも、それがまだ流入していないだけなのかもしれない。 見慣れない中東料理ばかりだったが、新しい料理にチャレンジするのは比較的好きなタチであるので、それはそれでいろいろとチャレンジしてみた。知ったところだと、フムスやファラフェル。今回の滞在でいちばんのお気に入りになったのは、「タブーリ」というサラダである。パセリやミント、玉ねぎやトマトをみじん切りにしてオリーブオイルで和えただけものだが、これがさっぱりとしておいしかった。 見た感じ、そして食べてみた感じ、中東料理というのは、①めっちゃクセが強いメインディッシュ(ラム肉みたいな)、②ミントが効いためっちゃさっぱり味(タブーリみたいな)、③とにかくひたすら甘いデザート、という極端な3つの味で構成されているように感じた。 ビュッフェ形式だった昼食でもいろいろ試したが、「カブサ」と呼ばれる炊き込みご飯がおいしくて、こればかり食べるようになった。インドの「ビリヤニ」のようなものだが、具材がラム肉だったり、シーフードだったり、いろいろ楽しむことができた(でも、ベースの味付けは同じ)。 しかしこれだけ中東料理ばかりが続くと、さすがにたまにはちょっと違うテイストの食べ物がほしくなる。初日の夕食のときのこと。ナムと一緒に食事をしながらそんな話をしていると、私がカップラーメンをサウジアラビアに持ち込めなかった話になった(前編参照)。 それを聞いて驚いたナムは、憐憫の眼差しで私にこう言った。 「そうか、そんなことが...... じゃあ、俺が持ってきた韓国のカップラーメン、ひとつやろうか?」 ――そしてその翌日。心優しいナムは、辛ラーメンとキムチを私に譲ってくれたのであった。 ※後編はこちらから 文・写真/佐藤 佳