ラクダをめぐる冒険~リヤド(中編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■会議初日の出来事 さて、到着翌日の会議初日。さすがWHOが選抜した面々だけが集まる会なこともあり、期待通り、そうそうたる面々が揃っていた。この年の3月のドイツウイルス学会(22話)で知り合った、ドイツの新型コロナ対応を牽引したクリスティアン・ドロステン(Cristian Drosten)教授や、WHOのメディア対応でよく目にするマリア・ヴァンケルコフ(Maria Van Kerkhove)女史などなど。この年の6月にオランダ・ロッテルダムで会ったバート・ハーグマンス(Bart Haagmans)教授(40話)も参加していた。 ――そして会場を見回すと、なんと、「行かない」と言っていたはずのナムもちゃんといるではないか。ひさしぶり、と声をかけるやいなや、 「この国は酒が飲めないんだろう? 昨日売店を見てみたけど、ビールも売っていなかった。かなしい(Sad)」、とナム。 コーヒーブレイクや食事の際には、いろいろな人と話をした。コロナウイルスつながりということもあり、新型コロナ研究に精通している人もちらほらいて、G2P-Japanの認知度はここでも健在であった。 それにこの会議には、欧米のトップレベルの研究者だけではなく、中東やアフリカの研究者たちも参加していた。この集会は、最先端の研究の情報だけではなく、公衆衛生や疫学、各国での動態や活動の情報を共有する場でもあるのだ。そしてWHOスタッフの言葉を借りれば、そのようなコネクションを「触媒する」ことが、WHOの重要な役割のひとつなのだという。 コーヒーブレイクでは、デーツ(なつめやし)とアラビックコーヒーに挑戦。「トーブ」と呼ばれる真っ白なイスラム教の男性の正装をまとったスタッフが、皿にびっしりと敷き詰められたデーツの横で、アラビックコーヒーの入ったポットを手に常時スタンバイしていた。 そして肝心のアラビックコーヒーであるが、いろいろなウェブサイトを見てもとにかく「独特」としか書いていなかったが、たしかに私の語彙では「独特」としか形容できない味だった。通常のコーヒーとはまったく違う飲み物である。ただたしかに、セットで出されるデーツとは妙によく合う。「カルダモン」というスパイスが強く効いているらしい。