2024年、生まれて初めてiPhoneを使ってみる。Android歴14年のライターが感じた「iPhoneのよくできている」トコロ
最近、長年のiPhoneユーザーで、Androidスマホへの乗り換えを迷っている人が多いらしい。聞けば「iPhoneの進化が頭打ちで魅力がどうも……」とか「シンプルにGoogle Pixelが気になる」とか色々な声があるようだ。 実際にネット上を見渡すと「iPhoneからAndroid機に乗り換えたら、こんなに快適だった!」というテーマで書かれた記事がたくさんある。……いや、ちょっと待って。世の中って今そうなってるの……? 実は私、2010年に初めてスマートフォンを持ってから今まで、Android機しか使ったことがない生粋のAndroidユーザー。マジで1回もiPhoneを通らないまま、実に14年も経ってしまった。 そんな私からしたら、むしろ一周回って今、機種変でiPhoneを視野に入れ始めたフェーズなのだが……違うんだ? みんな逆なんだ? いやあ、びっくりした。曲がりなりにもデジモノ系情報を扱うライターでありながら、世の中と致命的にズレてる自分に驚いた。 そして思った。これはむしろ、個人的なiPhoneの試しどきが来ているのではないか? と。なんだか逆張り野郎みたいで恥ずかしいが、こんな私の目線で使ったら、改めてシンプルなiPhoneの存在感が見えてくるんじゃないか……? というわけで、この14年間Androidしか触っていない私が、最新の「iPhone 16」を一週間使ってみたレポートをお届けする。なお、ざっくりした感想だけ先に言うと、iPhoneて本当によくできてますね。 ■私が2010年からAndroidを使い続けている理由 まず、自分がなぜ2010年からAndroidを使い続けることになったのか。その流れを振り返りたい。というのも実は私、この14年間ずっと普段使いのパソコンは「Mac Book Air」、スマートフォンはAndroid機(現在は「Google Pixel 6a」)という、謎のねじれスタイルで生きているのである。 これにはもちろん、ワケがある。私はかつて、2010年 - 2016年の期間に音元出版に在籍し、PHILE WEB編集部の記者・編集者だった。 私が入社した2010年当時は、ソフトバンク一社のみの扱いだったiPhoneが大ブームの中、ドコモがソニー・エリクソン(当時)製「Xperia SO-01B」を、auがシャープ製「IS03」を発売し、「今年が日本のAndroid元年になるか?」と言われていた時期だった(それまでにも日本でAndroid機がなかったわけではないが、その2社が大々的に注力して売り出したのが同2機種だったように記憶している)。 で、当時のPHILE WEB編集長に、入社早々言われたのだ。「え、杉浦さん、携帯の機種変時期なの? キャリアどこ? au? じゃあIS03だね! ちょうど11月に出るね!」(意訳)と。 それに対して自分は「や……ちょっと考えさせてもらって良いですか……」的に答えた記憶があるが、まあ結局、「こういう業界に入ったわけだし、新しいデバイスを使うのも仕事として大事だな」と思い、IS03を購入。これが、その後14年間ブレずに続くAndroidユーザーとしての第一歩だった。 ちなみに、そんな当時の自分が書いたIS03レビュー記事が以下である。 ▼自由すぎるよDroid君! Androidで “iPhoneにはできないこと” を満喫する https://www.phileweb.com/review/article/201012/28/237.html 2010年当時、Android機を選ぶとはどういうことだったのか。その雰囲気がほんのり感じられるのではないかと思うので、恥ずかしながら参考までにリンクを貼らせていただく(14年ぶりに恐る恐る読んでみたら、入社4か月の新人にしては意外と良いこと言ってる気がする。もちろん全ては、当時の上司や先輩のご指導のおかげです)。 ……で、「じゃあなんでパソコンはMac?」という話なのだが、実はかつてのPHILE WEB編集部は、上述の編集長が強火のApple信者なこともあり、支給されるパソコンはMacBookシリーズ一択だった。これにより、自然な流れで私の「MacBook Air+Androidスマホ」という謎スタイルが完成。その後も結局、パソコンもスマホも使い慣れたOSが楽だったので、変わらず今に至る。 簡単に言うと、2010年のタイミングでPHILE WEBにジョインしたがゆえ、私のパソコンとスマホのOSはねじれ続けているのだ。 これまで機種変やMNPでiPhoneにする選択肢もなかったわけではないが、自分的に「Android OSの純正端末がNexus(当時)」という世界観が『ブレードランナー』みたいで惹かれたのもちょっとあって、Androidから足を洗えなかった。 本企画の前提条件として、私は普段からMacユーザーで、元々Appleアカウントを持っていることを先にお伝えしておく。つまり、元からAppleの世界観を全く知らないわけではない。同じ企画テーマでも、Apple製品をほとんど使ったことがない人だったら、次項からのレビューはまた異なる使用感になるだろう。 人生初のiPhone体験で感じた「iPhoneの良いところ」 ■Androidユーザーが、人生初のiPhone体験で感じた「iPhoneの良いところ」 うっかり思い出話が長くなってしまったが、いよいよここから、iPhone 16を使ってみたレポートをお届けする。まず、知識としては知っていたが、改めて良いなと思った部分から。 いきなり感覚的な話で申し訳ないのだが、いちAndroidユーザーとしてiPhoneに真っ先に感じたのは、とにもかくにも “Apple的世界観の完成度” だ。もちろん、端末のタッチレスポンスや操作性で言えば、今やAndroid機各種も負けていない。2010年時にiPhoneと圧倒的な差が開いていた頃とは比べ物にならないくらい、Android機は使いやすくなっている。 しかし、iPhoneはその操作性に、“Apple的な質感” が付随するとでも言おうか。トータルのデザイン性が洗練されていて、1台のスマホの中で世界観が完結している感がすごい。macOS、ひいてはApple Storeの空間性やAirPodsなどの周辺機器とも繋がるこの世界観の統一性はエモくて、今も昔も熱烈なAppleファンが存在する理由がよくわかる。言ってることが今さらすぎる自覚はある。が、触ってみて結局そこが明らかな魅力だった。 そしてもうひとつ、マジですごいと思ったのがカメラ性能の高さ。実は私、とっても写真が苦手。手持ちのPixel 6aでは、長く使って試行錯誤するうちにカメラ設定を使いこなせるようになって、何とか撮影できている。 しかしiPhone 16は、こんな私でも最初からシャッターボタンを押すだけで、ある程度良い感じの写真が撮れた。大した設定をせずとも、勝手に写真の雰囲気が良くなる。iPhoneのカメラ性能の件はよく聞いていたけど、確かにこれならインスタとか気軽に始められるよなあ。 もちろん、Android機も機種によってはカメラ性能が高い。しかし、どの機種がカメラ性能が高いのかは、自分で調べる必要がある。それが、「iPhoneはカメラ性能が高くて綺麗な写真が撮れる」の言葉だけで成り立つ存在なのだから、強すぎる。日常生活から “映え” を意識してしまう、SNS全盛の今は特に。 また、カメラ機能の中でも「フォトグラフスタイル」が使いやすかった。写真撮影時に、画面でプレビューしながら全体の色味&トーンを変更できる機能だが、それなりに雰囲気の出るフィルターでありながら、自然な調整を加えてくれるのだ。 なお、この「フォトグラフスタイル」、実は2021年発売の「iPhone 13」シリーズからあるらしい。ただ、撮影時に写真スタイルを選択した後、さらにタッチパッドのようなUIから直感的な調整ができるのは、iPhone 16シリーズから採用された新機能とのこと。まさに「ここが良い」と思ったところが進化点だった。 そんなわけで、「UI・世界観の統一性がエモい」とか「カメラ性能が高くて使いやすい」とか、iPhoneユーザーの皆さまからすると「今さらそこ?」と思われるであろう感想ばかりで申し訳ないのだが……。 14年間Android機しか使っていない人間からすると、やっぱり何も考えずに洗練された世界観を享受できたり、綺麗な写真が撮影できる性能の高さは、シンプルに魅力なのだ。で、冒頭の感想になる。iPhoneて本当によくできてますね。 ※2024/10/21 追記:こちらで掲載しているAndroid機の撮影写真は、2年前に出たPixel 6aを使った作例なので、最新のiPhone 16と画質を単純比較するのはフェアじゃないことを付け加えておく。どちらかというと、「初めて触るiPhone 16でもすぐ、使い慣れたPixel 6aと同等の写真がすぐ撮れた」…という喜びの報告として受け取っていただければ幸いだ。 今年の機種変、iPhone 16も視野に入れてみよう ■iPhoneによる音楽再生の今 続いては、音楽再生機能のポイントにも軽く触れておこう。かつては、母艦となるMacおよびiTunes(クラウド)とiPhoneを紐付けることで実現する、シームレスな楽曲管理と再生スタイルが魅力だった。自分はこの良さを享受できないまま過ごしていたわけだが、今や音楽再生ソースはサブスクの配信サービスが主流なので、この辺の重要度は下がっている気がする。 あと、ワイヤレス音楽再生スタイルの先陣を切った「AirPlay」のことも忘れてはいけない。現在の「AirPlay 2」も、引き続きスピーカーのワイヤレス再生における使い勝手の良さは強い。 ただ現在は、外出先でBluetoothイヤホンを使った再生シーンが多いのも事実。Bluetooth関連のスペックだけを見れば、iPhoneシリーズが高音質コーデックの「LDAC」などに非対応であることは、Android機と比較してウィークポイントにはなる。 ……と言いつつ、今どきのBluetoothイヤホンは、iPhoneで音楽を聴くことも念頭に作られているモデルが多いと推察する(再生デバイスのひとつとして、圧倒的なユーザー数を誇る存在を無視しないだろう)。シビアな音質再現系よりは、エンタメ性の高い音作りのモデルを選ぶなど、好みに合わせてイヤホン側の選択肢を吟味することで、iPhoneのAAC接続でも十分に音楽を楽しめる……と個人的には感じる。 なので、この辺については、「Androidの方がLDAC対応機種を選べる自由度があるのは魅力だが、別にiPhoneでも音楽再生を楽しめるのは事実」という所感だ。 ■大クラウド時代、スマホのOSはそこまで意識しなくて済む さて、今やここが一番のポイントなのだが、日常的によく使用するサービスやアプリについては、もはやOSを意識せずに使えた。最後にこの嬉しさを語って、本記事を締めくくろう。 私がメインで活用しているメールクライアントはGmailだし、スマホで撮影した写真はAmazon Photoと自動連携してクラウドに保存している。サブスク系では、映像配信サービスはPrime VideoとNetflix、音楽配信サービスはAmazon Musicを使用。いずれのサービスも、Android機で使っているアカウントをiPhone側で引き継いで、特に難なく使えた。 そう、ぶっちゃけた話、GoogleアカウントとAmazonアカウントとの連携で使っているサービスが多すぎて、もはや端末のOSを意識せず使うことができたのだ。これこそ、クラウド全盛時代の使用感。このタイミングで、多くのiPhoneユーザーがAndroid機への乗り換えを視野に入れ始めたのも、これらクラウドサービスの普及が背景にあるだろう。 かつては上述の通り、MacとiPhoneのシームレスな連携を羨ましいと思っていた私も、ここ数年は「MacBook Air+Androidスマホ」スタイルのねじれをほとんど感じずに過ごしているのが事実だ。おおらかな時代になったなあ。 ■今年の機種変、iPhone 16も視野に入れてみよう というわけでまとめると、14年間Android派の自分からしたら、iPhoneはiPhoneでやっぱり魅力的だった。実は私、この11月で、現在使用しているPixel 6aの機種変タイミングが来る。なので、今回はiPhone 16への機種変がアリかどうか確かめたかった部分もあったのだが、結論としては十分に選択肢としてアリだった。 もちろん、古いiPhoneからiPhone 16シリーズに機種変を考えている場合は(そしてそういう人が大多数だろう)、機能性に対する前機種との価格差も重要なので、悩む部分は色々あると思う。それを踏まえた上で、あくまでも2010年からAndroid機を使い続けた私目線の結論ということで。何にせよ、「iPhoneからAndroid」「AndroidからiPhone」、双方の機種変スタイルがアリな時代になったのだと思うと、Android歴14年のユーザーとしてはただただ感慨深い。
杉浦みな子