「ほぼ日手帳」好かれる理由 ユーザー目線でNo.1に 「ほぼ日手帳」(上)
多様な書き込み引き出したゆったり「余白」
ほぼ日では、ほぼ日手帳を「LIFEのBOOK」と位置付けている。「持つ人それぞれの好みやライフスタイルにあわせて自由にのびのび使える」という意味だ。現在のチームリーダーを務める星野槙子氏は「1年間かけて書き込むうちにいっそう愛着が深まるような距離感の近さが持ち味」と、ほぼ日手帳の「らしさ」を語る。 かつては多くの企業がいわゆる「社員手帳」の形で「年玉(ねんぎょく)手帳」を従業員や取引先に無償で配っていた。折り返し部分に社是や社訓を刷り込んであり、巻末には年齢・年号早見表や度量衡換算表、支店・営業所リストなどを記すタイプが主流。年末年始に渡したところから「お年玉」に見立てて年玉手帳と呼ばれた。 無料配布は喜ばれた半面、ページの大半はスケジュール帳だったのに加え、余白が狭くて最低限の業務しか書き込めなかった。要するに「仕事用」だ。1年後に読み返しても、当時の業務状況しか分からず、個人的な記憶や体験を味わう魅力に乏しかった。 お仕着せ手帳への不満もあって、記入スペースを広げた各種の手帳が登場した。しかし、大半はスケジュール管理が主目的という枠にとらわれたタイプ。「相棒、分身、外部記憶」といった親近感を持つ手帳は、ほぼ日手帳の出現を待つことになる。
持ち主が日々を豊かにするコンテンツを自ら生み出す手帳
書き込む中身を好きに決められるという設計がユーザーの書き込みマインドを掘り起こしたようだ。ユーザーが公式サイトの「みんなの使い方」コーナーに投稿した事例を見ると、外食レビュー(評価)や読書日記、ゲーム記録、アイデアメモ、体調管理、名言集、ペット観察記、試験対策、推し芸人リポートなど、活用法の多さに驚かされる。持ち主が日々を豊かにするコンテンツを自ら生み出している構図だ。 いろいろな使い方を伝えようと、ほぼ日が毎年刊行しているのが書籍の『ほぼ日手帳公式ガイドブック』だ。2024年版では歌人・俵万智氏の「短歌ができる」をはじめ、「子どもの成長を残せる」「料理をたのしめる」「趣味をきわめられる」「家庭菜園がはかどる」など、これまでの手帳とは異なる使い方を紹介した。最新の2025年版のガイドブックは「100人100通り」の使い方を公開。5年手帳を使う俳優の松岡茉優さんや、娘さんに作る弁当の絵日記をつづる漫画家・吉田戦車さんの事例を紹介している。 定番の1日1ページ式は「オリジナル」(文庫本と同じA6判)と「カズン」(A5判)の2種類がある。「最も売れているのは国内ではオリジナル。北米ではカズン」(小泉氏)だという。本体とカバーを一体化した「ほぼ日手帳HON」タイプも登場した。1日1ページ式のほかにも週間式の「weeks」、月間式の「day-free」、5年式の「ほぼ日5年手帳」などをそろえている。