もう、後悔しても仕方ないからーーギャラ交渉も自分で、東出昌大35歳の今 #ニュースその後
俳優の仕事は、ずっと続けるつもりだ。 「僕にとっては金を稼ぐ手段なので、やめられないです。生きていくために、と言うとネガティブに聞こえるかもだけど、歯を食いしばってやることもある。こんなに苦しい仕事を、いつまで続けるんだろうって途方に暮れたり。でもそこが、楽しかったりする」 山での暮らしぶりが話題になり、俳優としての実力を再評価する声も増えた。 「うーん。仕事が続いたことは幸運。見ていただくだけでありがとうございます、なんですけど、俳優というのは、良さが数値化されるわけじゃないですよね。そこはタイムを競うスポーツ選手とは違う。これは画家も建築家も、表現する人はみんなそうだと思うんです。まだ、もっとできることがあるんじゃないか。いつもそう考えています」
危なっかしく映るようですけど、もう、後悔しても仕方がないから
東京にいた頃は、どろどろとした思いを抱えてもいた。 「嫉妬ですか。しましたよ。そろそろ大河の主演をやりたい、やらなければ、とか。アイツが出てるあのドラマ、視聴率いいんだ……とか。こうやってキャリアを積み重ねているんだから、次はこうしなければと焦る気持ちもあった。たくさんの人たちに囲まれて、みんながいろいろ僕のために考えてくれてもいましたから」 一連の騒動があって、離れていった人も、少なからずいる。疑心暗鬼になった時期も長かった。知らない人を見ると、「記者か」と恐怖も感じた。 「まあ、離れた人、それは、そもそも仲が良かったわけじゃないんだと思う。田舎に移り住んで、また人間関係が広がっています。『人を信じすぎないほうがいい』って言われることもあるけど、居酒屋で隣り合えば、話しちゃうしな(笑)。芝居は一生懸命だけど、芸能人らしくできない人間なんですよ。開き直っているんじゃなくて、そもそも、向き不向きの問題だったのかな。危なっかしく映るようですけど、もう、後悔しても仕方がないから」
田舎の人間関係は、濃厚だ。面倒だと感じることはないのだろうか。 「うーん、そうですね。知り合うほどに、都会との違いは感じるし、いびつさもあると思う。でも、そこが面白さ。東京は、僕にとっては無味乾燥、もともと、つながりを育むことができなかった。こっちは、子どもの頃に戻ったような感じです。母が料理の途中で醤油を借りにいく、みたいな。今日も、大きな白菜をもらったので、漬物を作ろうと思ってて」 東出自身も、真冬以外は畑仕事に精を出す。 「野菜は育てるか、いただきものばかり。ショウガ、ニンニクは周りで作ってる人がいないから、スーパーで買いますけど。肉にはまったく困らないし。料理は独学です。まあ、すごいできる、というほどじゃないけど。あ、お昼、まだですか。よかったらどうぞ」 鍋いっぱいに作ってあったのは、鹿肉と穴熊肉のシチューだ。 「肉と、ジャガイモとニンジン、タマネギを水から煮て、ローリエを入れて。煮立ってやわらかくなったところに、トマトソース、デミグラスソース、ウスターソース。あとはワインビネガーと砂糖、唐辛子かな」