タワマン投資は完全に曲がり角「物件価格1億7700万円・表面利回り2.34%」で元も取れず…外国人投資家も冷め始めた
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー) >>「返済総額1500万円増も現実に? 35年変動・8000万円のペアローンを組んだパワーカップルを待つ金利上昇の深刻な影響【利上げとタワマン:住宅ローン編】」から続く 【写真】東京都中央区の日銀本店=2023年2月14日(写真:共同通信社) ■ タワマン投資家にとっては完全なバッドニュース タワマン購入層のもうひとつのカテゴリーが国内外の投資家層だ。不動産投資を行う投資家にとって金利引き上げは完全なバッドニュースだ。 資金調達レートが上がることは物件購入をするときの負担増になるだけでなく、投資する物件に対する期待利回りを上げなければならなくなるからだ。 不動産投資を行う際の基本は、取得しようと考えている不動産に対する期待利回りだ。つまりその不動産を取得して、外部テナントに賃貸した場合、取得価格に対してどのくらいの賃料収益を「期待」するかで投資を判断する。 そして年間で得られる賃料収入を取得価格で割った料率を表面利回り(グロスレート)という。 湾岸エリアに実在するあるタワマンの例で考えてみよう。 このタワマンは5年前に売り出され好評のうちに完売している。現在中古マーケットで販売中の専有面積70.09m2 (21.20坪)の住戸Aを取り上げて分析してみる。
■ 物件価格1億7700万円、希望賃料34万5000円でシミュレーション 売却希望価格は1億7700万円(坪単価:835万円)だ。住戸Aを取得して仮に賃貸に拠出した場合、どの程度の利回りが得られるのだろう。 幸いなことにサイト上には、同じタワマン内で賃借人募集を行っている住戸が、びっくりするくらいたくさん掲載されている。 この中から同等の条件の事例を取り出してみると、月額賃料(希望賃料)は34万5000円である。これは現在の売り出し価格(1億7700万円)だと表面利回りは2.34%だ。 実際には賃料をすべて懐に入れられるわけではなく、管理費や修繕積立金が差し引かれる。また固定資産税や都市計画税の負担も必要になるが、いずれにしても利回りとしては極めて低いと言わざるを得ない。 現在の不動産投資マーケットであれば期待利回りはグロスで4%は欲しいところだろう。これは賃料に直せば月額59万円になる。 実際の募集賃料が相場だとすれば、乖離は25万円にもなる。表現を変えるならば、ソフィスティケイトされた不動産投資家であれば、この高い物件にはまず手を出さないという結論になる。 現行賃料を基準に期待利回りである4%を確保できる買値は1億350万円だ。つまり買う側からみれば、こんな価格で買ってはいけないということになる。 不動産投資ローンの場合には住宅ローンのような低金利商品はなく、現行でも金利は3%から7%程度だ。期待利回りは4%でも全く「利(理)に合わない」のである。 つまり価格が跳ね上がってしまったマーケットで新たに資金を調達して投資をする意味がほぼ全くなくなってしまっていることに多くの投資家が気づくきっかけを作ってしまったのが今回の利上げアナウンスだったと言い換えることもできるだろう。