タワマン投資は完全に曲がり角「物件価格1億7700万円・表面利回り2.34%」で元も取れず…外国人投資家も冷め始めた
■ 外国人投資家も冷め始めている さらに利上げはここ数年で猛威を振るった外国人による購入にも影響を与える。 日本の金利の上昇と欧米の中央銀行による金利引き下げが同時にすすむと金利差が縮小する結果、為替は円高に振れる。 円高は当然外国人の投資マインドを冷ます効果がある。 海外富裕層は現金で気楽に日本のタワマンを買ってきたが、円高は彼らにいったん投資を手仕舞いさせる誘因となる。新たに投資をする際には、円高は「物件価格の上昇」となるからだ。 逆に所有してきたタワマンを売却すれば、当初想定していた自国通貨換算では為替安に働くことから想定以上に値上がりしていることになる。 また当初は日本に繰り返しやってくる彼らにとってホテル代わりに気楽に買っていたタワマンをいつも使うわけではないので当面賃貸に出してみようとする人が増えている。 ところが先述したように月額賃料で数十万円を負担してでも借りる人は少なくとも日本人にはほとんどいないことに彼らは気がつき始めている。 最近、彼らの一部には日本のタワマンが全く期待利回りに達しないことに失望感を深める人が出始めているという。 今後はもっと価格が下がって投資利回りにフィットするようになるのを待つか、賃料が大幅に上昇して利回りが期待値まで上がってくるのを待つかになるだろう。
■ 節税手段としての特典もはく奪された では相続税の節税で購入する需要はどうなるだろうか。 これは利上げや円高とは直接関係しないが、今年1月の税制改正で、マンションの相続においてはタワマンであるとないとにかかわらず、相続評価額と実勢価格に1.67倍以上の差が生じている場合には一律、実勢価格に戻したうえでその60%の評価で取り扱うように改正された。 タワマンは時価と評価額の乖離が大きく、とりわけ高層部の物件価格の高い部屋を買うほどその効果が大きくなる。つまり高ければ高いほど効果も高いという歪んだ構造を持っていた。 ところが今回の改正ではどの階層であろうと60%評価となってしまったので、タワマン、しかも高層階を高い価格で買うという動機が薄れてしまったのである。 今後見込まれる金利の引き上げは現在変動金利型住宅ローンでタワマンを買っている人にとっては支払額(とりわけ総返済額)の負担増による経済的破綻を招来するリスクを顕在化させた。 また目先の金利上昇はこれから実需で購入を検討する人にとっても調達コストの増加は購入の先送りや断念につながる。 投資家にとっても期待利回りのバーの上昇は、物件価格の下落がないかぎりとても手が付けられないレベルになっていることに気づくきっかけとなった。 円高は外国人による投資の手を止めるだけでなく、いったんエグジットして投資を手仕舞いする動きを誘発する。 節税手段としての特典もはく奪されたタワマンマーケットはどうやら曲がり角を迎えることとなりそうだ。今後の利上げ動向から目が離せない。
牧野 知弘