大学院で蓄電池を研究し、日産でエコカー開発へ 「理工系学部なら変化に対応できる」
理系職種が社員の大半を占める製造業は、まだまだ男社会……そんな印象を持っている人は多いかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。大学院で「リチウム電池」について研究したのち、自動車メーカーに就職した女性のケースを紹介します。(写真=本人提供) 【写真】加藤さんも携わった、20年に登場した100%電気自動車「日産アリア」(写真=日産自動車提供)
蓄電池の研究に興味
日産自動車でバッテリーシステム設計を行う加藤えりさんは、同志社大学理工学部3年のときに、「環境問題の解決につながる蓄電池や燃料電池を研究したい」と思い、卒業後は京都大学大学院人間・環境学研究科に進みました。 理工学部で所属していたのは機能分子・生命化学科で、物質化学や生命化学について学んでいました。それが一転して蓄電池や燃料電池について研究したいと思った背景には、同じ理工学部の電気化学研究室に在籍していた先輩との会話や、時代の変化がありました。 「大学院に進むか就職するか将来について考えていたとき、気候変動の影響が目に見える形で現れ始めて、エコカーへの期待が高まっていました。研究室の先輩が話す蓄電池研究のことを聞いて面白そうな研究だなと感じ、世の中の課題解決につながる可能性がある研究のほうが、よりやりがいを感じられそうだと思いました。それで大学入試のときに第1志望だった大阪大学と迷った末、研究の内容から京都大学に挑戦し、大学院に進んで蓄電池の研究をしようと決めました」
積み上げた知識を生かせる職業
日常生活に欠かせない電気は、あらゆるものづくりの現場で必要不可欠です。そのため、電気工学科や大学院電気工学専攻は、電気・電子メーカーだけでなく、情報・通信、電力・エネルギー、機械、自動車、建設などの企業に就職がしやすい傾向があります。たとえば、芝浦工業大学の2024年3月の電気工学科卒業生の就職内定率は100%。日本大学の電気工学科と大学院電気工学専攻の23年度の進路には、富士通や村田製作所、大林組、三菱自動車工業などの企業が並んでいます。 大学院での研究は、就職先にもつながりました。「大学と大学院で積み上げてきたことを生かせるのは、ものづくりの企業だという確信があったので、就職活動で迷いや不安はありませんでした。研究してきたリチウム電池の知識を生かしてものづくりができる企業にしぼって、集中的に就活できたので気が楽でした」