捕虜殺害を受けイスラエル国内の美術館が休館を発表。「人々への連帯を示す」
9月1日の夜、ハマスに人質として捕らわれていた民間人6名の死亡が確認されたことを受け、ガザ地区における停戦・人質解放交渉の成立を政府に求めるゼネラル・ストライキがイスラエル各地で行われた。デモ隊がエルサレム市内の道を占拠し首相官邸の前で抗議活動を行ったほか、テルアビブ付近の高速道路を封鎖し、殺害された人質の写真が貼り付けられた写真を掲げ人質の返還を訴えたという。 殺害された6名の民間人はラファの地下で発見されたのちに、イスラエルに返還された。ハマスに捕らわれているおよそ100名の人質のうち、少なくとも3人は7月に停戦協議で条件が提示された際に解放される予定だったという。 人質になっているイスラエル人の家族団体「人質・行方不明者家族フォーラム」はイスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフに責任を追及しており、次のような声明を発表している。 「遺体となって戻ってきた6人の人質は、11カ月に及ぶ暴力や拷問に苦しめられたのちに、帰還の数日前に殺害されている。停戦協定の合意が遅れたことで6名の人質、及びにこれまで捕らわれてきた人質たちが殺害されているのだ」 こうしたなか、イスラエルの主要労働組合であるヒスタドルートが呼びかけたこのストライキにほとんどの自治体が参加しており、翌2日には多くの美術館や博物館が行方不明者の家族に連帯を示すべく休館を発表。休館するに当たってイスラエル博物館は次のような声明を、同館のウェブサイト上で9月2日に発表した。 「愛する人を人質に取られた人々への連帯を示すため、ハマスに捕らわれ残酷に殺害されてしまった人々に対する追悼の意を示すべく当館は本日休館いたします」 また、テルアビブ美術館は6名の人質が殺害されたことを受け、画家のモシェ・ゲルシュニによるサウンドアート作品を屋外で放送した。《Dedicated Hand》(1976年)と題されたこの作品は、複数の章から構成される政治的な作品で、ザルマン・シュヌールのヘブライ語の詩を朗読するゲルシュニの音声も収録されている。ゲルシュニの作品を再生した理由について、テルアビブ美術館の館長を務めるタニア・コーエン=ウッツィエリはArt Newspaperの取材に対してこう答えた。 「6名の新たな犠牲者が出たという知らせを受け当館は、連帯を示すために直ちに休館する決断を下しました。テルアビブ美術館は、社会活動を行う機関であり、表現の自由、平等な権利、教育、そして地域社会の文化発展を最も重視しています。近年では、司法改革に対する抗議活動に積極的かつ重要な役割を果たしており、人質・行方不明者家族フォーラムと協力関係にあり、当館の広場に設けられた『人質広場』は、人質の帰還を求める人々が集まり痛みを分かち合う場として開かれています」 人質広場は、ハマスによる10月7日のイスラエル襲撃を受け、テルアビブ美術館のエントランス広場に設けられたスペース。広場にはインスタレーション作品が展示されているほか、人質・行方不明者家族フォーラムによる抗議集会の場になっていたり、安息日の晩餐会の開催場所となったりしている。
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