街中に広がる〈十和田市現代美術館〉と、市内に点在するアートな建築【青森でアートを巡る旅へ】
さらに、ハシゴを降りて店の地下に行くと、コンクリートでできた山並みが忽然と現れる。これは2012年の個展で栗林隆が制作した《インゼルンチャホ》という作品だ。山並みは日本列島を現しているのだが、地下室の床は海底近くにあたるため、北海道も本州も一連なりになっている。
十和田では80年前に大火があり、建て直す際に多くの店が倉庫などにするため地下室を作った。しかし戦前の物資不足や技術的な問題から水が染みだしてしまい、ほとんどの地下室が水浸しで使えなかったという。栗林の作品も、2012年当時は実際の日本列島と同じ高さまで水に浸かっていた。このとき栗林は〈十和田市現代美術館〉では霧によって海面を現した、世界の五大陸を再現したインスタレーションを発表している。美術館と街中とが、こんな形でつながっている。
●市内に点在する、アートな建築
近くには藤本壮介が設計した〈十和田市地域交流センター(とわふる)〉や隈研吾による〈十和田市民交流プラザ「トワーレ」〉がある。〈とわふる〉は「アートのまちのリビング」をコンセプトに、大きな窓のあるリビングルームのような中庭がある施設だ。大・中・小の展示室のほか、ダンスの練習や料理教室などに使える多目的室がある。〈トワーレ〉では内部に前面のストリートの延長となる「みちの広場」があり、長い冬を中心に市民の交流の場となっている。この「みちの広場」に面して子どもたちのプレイルームやキッチンスタジオが配置された構成だ。 〈十和田市現代美術館〉が開館して16年が経過し、街中のアートや建築も育っている。
photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano