街中に広がる〈十和田市現代美術館〉と、市内に点在するアートな建築【青森でアートを巡る旅へ】
青森県で開催中の「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」は県内5つの美術館とアートセンターが連携して行うアートフェス。アートを通じて青森のいろいろな顔に出合えます。 【フォトギャラリーを見る】 青森県で開かれている「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」では「つらなりのはらっぱ」を共通テーマに各館が独自にキュレーションした企画展を行う。参加しているのは〈青森県立美術館〉〈青森公立大学 国際芸術センター青森〉〈弘前れんが倉庫美術館〉〈八戸市美術館〉〈十和田市現代美術館〉の5館だ。一つの県に現代美術を主に扱う美術館が5つもあるのは珍しい。青森という地や歴史に対してアーティストがそれぞれ呼応したアートが楽しめる。街中にアートが広がる〈十和田市現代美術館〉を訪れてみよう。
●街中に広がる白い箱の美術館〈十和田市現代美術館〉
西沢立衛が設計した〈十和田市現代美術館〉は街中に白い箱が点々と並べられたような建築だ。“箱“の中には原則として一つの箱に一つずつ、恒久設置作品が収められている。大きな窓のある”箱“や壁画が描かれた”箱“もあり、通りからもアートが楽しめる。美術館の向かい側にある「アート広場」では草間彌生らの作品を空の下で楽しめる。
〈十和田市現代美術館〉の企画展示室では「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」のメイン企画として『野良になる』展が開催中だ。
「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」の共通テーマ「つらなりのはらっぱ」から浮かび上がる“人間と自然との交わり”をさらに一歩進めて、気候変動など環境について考えるためには自然を描くだけでなく、人間のあり方そのものを考え直すことも必要ではないか。展覧会タイトル「野良になる」にはそんな思いが込められている。
丹羽海子の《メトロポリス・シリーズ:太陽光処理施設》は捨てられた電化製品やペットボトルなどで作られた、工場の風景のようにも見えるインスタレーションだ。よく見ると着色されたコオロギが置かれている。コオロギは仲間を探すときに歌を歌うが、その声が大きすぎると敵に見つかってしまう。丹羽は、そんなコオロギの生き方に、自身のトランスジェンダー女性としての孤独や喪失感を重ね合わせて、作品に登場させている。