70歳男性がコロナ禍で無一文・ホームレス直前でたどり着いたシェアハウス、不動産会社が居住支援続ける理由とは。大家の理解広がる新展開も プライム・神奈川県座間市
理解あるオーナーからの物件提供が増えてきている
自社経営のシェアハウスの経営から4年。一方でプライムが管理を担当している大家さんへの理解も深まってきているようです。 無職や低所得など事情のある人が不動産会社で断られることについて、石塚さんもかつて不動産会社に勤めていたことがあるので「オーナーと賃借人の間でトラブルになることを恐れ、断ってしまう気持ちは理解できる」と言います。しかし、オーナーの中には、体制さえ整っていれば受け入れたい気持ちを持っている人は多いと感じているそう。 「今私たちに管理を任せていただいている大家さんは、高齢者でも受け入れたいという気持ちがあり、『投資として成立してトラブルがなければなお良し』と思ってくれている人たちです。私たちの活動を理解して、もっと提供する物件を増やしたいと言ってくださる人も増えてきました」(石塚さん)
プライムで住まい探しに困っている人たちに紹介する部屋は、自社で管理する物件がほとんど。活動に賛同するオーナーの理解があって成り立っていて、救われた命もたくさんある。一方で、入居可能な部屋は必ずしも入居者の希望通りにはいかないことも多い。「借りる側にも妥協は必要」と石塚さんは言う。
しかし、プライムに助けを求める人の中には生活保護を申請しても審査を通らず、収入がない人も。そうなると、無料低額宿泊所といわれる宿泊施設を頼るしかありません。ところが、「無料低額宿泊所といわれる場所は、劣悪な環境である場合も多い」と石塚さんは言います。一時的な仮住まいであっても、なるべく過ごしやすい環境を用意したいと考えた石塚さんは、23人を受け入れられる無料低額宿泊所も運営しているそうです。
多くの団体や企業と連携して居住支援の輪を広げたい
長年にわたる活動が評価されて、プライムは2024年に国交省による「地域価値を共創する不動産業アワード」優秀賞に選ばれました。 しかし、石塚さんは「もともと私がやりたいと思ったことをやってきたに過ぎない」と話します。評価されたり、感謝されたりするよりも、オーナーや入居者とコミュニケーションが増えて、人として関わり合えるところにやりがいを感じているそう。そして「受賞を機に、ポータルサイト運営会社や行政、同業者の反応が増えた」とも。 「全国には、住まいの支援について相談をしても、納得いく対応が得られない自治体もある中、居住支援や生活支援について積極的に知ろうとする動きが見られるようになったことは、良い変化だと感じています。座間市のように官民の連携がここまでうまくいっている地域は珍しいらしく、『どうやって協働ができているのか』とお問い合わせを多くいただくようになりました」(石塚さん) さらに「このような機会を通じて同じ志を持った団体や企業と出合い、連携することで、支援活動にさらなる広がりを持てたら」と石塚さんの夢は広がります。 プライムに助けを求める人は、年齢や健康上の理由から部屋を紹介してもらえなかったり、入居費の捻出すらままならなかったり、さまざまな困難に面しています。しかし、住む場所があり、近くに気にかけてくれる人がいれば、そんな境遇から抜け出せるかもしれません。 プライムが運営するシェアハウスは、自立した生活が難しかったかもしれない人が生活を立て直し、リスタートのきっかけとなり得ます。プライムの活動を通して、居住支援が支援を必要としている人たちの助けになるだけでなく、オーナーにとっては投資ビジネスになり、そして不動産会社が事業を継続させていくことができる三方良しの取り組みとして、これからの発展に期待したいです。 ●取材協力 株式会社プライム
和田 文(りんかく)
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