H3ロケット、3機連続打ち上げ成功 防衛通信衛星を搭載
きらめき3号分離後には、衛星を高度約3万6000キロの静止軌道の近くまで届ける技術を検証するため、2段機体の飛行データを取得した。この技術はH2Aで2015年に「高度化」と称し実現したもので、H3では当初から仕様に盛り込んでいる。一般に、ロケットが静止衛星を投入するのは、静止軌道の“手前”にある静止遷移軌道だ。衛星はその後、自力で静止軌道まで到達する必要がある。静止軌道は赤道上空にあるため、赤道付近に発射場を持つ欧州が打ち上げに有利だ。そこで2段機体を、衛星を載せたまま長く飛行させる技術により、国産ロケットの“地理的な弱点”を克服する狙いがある。来年度にも打ち上げる「技術試験衛星9号機」で初適用する。
H3の1号機は昨年3月に打ち上げられたものの、2段エンジンに着火できず失敗した。原因は2段エンジンの電気系統の異常。JAXAなどが異常の発生シナリオを3通りに絞り込み、全てに再発防止を施して2号機以降、成功を続けている。
4号機は当初、先月20日に打ち上げを計画した。しかし、H2Aの49号機が悪天候で延期を重ねた(9月26日打ち上げ成功)ことや、エンジンのバルブの異常を受けた部品交換と点検、悪天候により、延期を繰り返した。政府の宇宙基本計画工程表によると、H2Aは50号機が今年度中に温室効果ガス・水循環観測技術衛星を打ち上げて退役する。
きらめき3号は2008年から運用中の民間通信衛星「スーパーバードC2」の後継で、降雨などに妨げられにくく、妨害や傍受の対策が取りやすい周波数帯の「Xバンド」を採用した。開発費は打ち上げや運用を含め約700億円。通信を高速化、大容量化することで、自衛隊の作戦部隊の指揮統制や作戦情報支援などに役立てる。
既にXバンドのきらめき2号を2017年、同1号を18年に打ち上げており、これで防衛省独自の3基体制が整った。陸海空の各自衛隊は互いに通信方式が異なるが、これらを一元化して広域の統合運用能力を高め、有事即応体制の強化につなげる。2基の運用により、既に国連平和維持活動(PKO)やアフリカ東部ソマリア沖の海賊対処活動などで効果を発揮しているという。