アーモンドアイは“とにかく面倒見のいいお母さん”日本競馬史上屈指の名牝が歩む母としての道【もうひとつの引退馬伝説】
3歳時は牝馬クラシック三冠に加えてジャパンカップ制覇を達成。 古馬となり、ドバイでの海外GⅠ制覇を含め、GⅠ5勝を積み上げて引退した稀代の名牝・アーモンドアイ。 【動画】GI9勝アーモンドアイのベストレースは? 衝撃の世界レコード? それとも3頭の三冠馬対決? 2020年のジャパンCを最後に現役を引退して繁殖入り。初仔がデビューを果たし、今後は母としても大きな期待がかけられている。 今回は現役時のアーモンドアイを管理した国枝調教師に聞いた、母としてのアーモンドアイとその産駒の特徴を、著名な競走馬の引退後を追った『もうひとつの引退馬伝説~関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。 アーモンドアイの引退が発表になったのは、二度目のジャパンカップ参戦を表明した時。 コントレイルとデアリングタクトの挑戦を受けることは言うまでもなく、ここがラストランになることを、管理していた国枝栄調教師本人が自らの言葉で発信した。 ほぼ同時に、繁殖入り後の初年度のお相手が話題になった。国枝師本人も、その注目度の大きさに驚いたひとりだ。 「あれだけの馬だから、当然といえば当然なんだけどね。エピファネイアとの間にできた初年度産駒が生まれた時は、自分が任せてもらえることが決まっていたのもあって、取材をひっきりなしに受けることになったよ。繋養先のノーザンファームから美浦に入厩した時も、今度はより具体的に、印象とか感触とか、デビュー予定とかを聞かれることになってもう一度驚いたね」 改めて、「アロンズロッド」と名づけられた産駒について印象を聞いた。 「筋肉のつき方とかはアーモンドに似たところがあるし、やっぱり動きは似ている気がする。うん、いい雰囲気は持っているよ。現時点では楽しみしかないけど、とにかく無事に行ってくれることを願っている(2024年10月26日の新馬戦で4着。2戦目は11月23日の未勝利戦を予定)」 国枝師といえば牝馬の管理については、他の追随を許さない存在だ。その師から見た〝母アーモンドアイ〟の印象はどうなのだろう。 「それがね、すごく仔馬の面倒見がいいみたいなんだ。たまに仔馬を放ったらかして我関せず、みたいに過ごす母馬もいるけど、アーモンドはそうじゃなくて、いつも目の届くところにいて、いいお母さんしてるみたい」と、少し意外な言葉が返ってきた。 「アパパネと比べると、アーモンドアイは全体にピリッとしたところはあったよ。たまに手がつけられないくらいに暴れることもあったし。でも、基本的にはおとなしくて、普段は落ち着いている方だったよね。やっぱり繁殖に上がっても、そういう気性の馬の方がいいんじゃないのかな。放牧中の穏やかな様子を見ていると、現役時代とはずいぶん印象が違うようには感じるけどね。さすがに『まるで別の馬だ』とまでは言わないけど(笑)」 アーモンドアイの2番仔は父モーリス。3番仔は父キタサンブラックで2024年1月に無事に出産を終えた。 そして新たにイクイノックスが配合され、こちらも受胎が確認されている。繁殖入りしてから、質の高い種牡馬との交配が続き、毎年順調に生まれてくる産駒たち。このことについて〝牝馬の国枝〟の言葉は印象深い。 「現役時代の活躍も重要だけど、繁殖馬として仔出しがいいのは、何よりなんじゃないかなぁ。アパパネも、コンスタントに走る馬を出してくれているし、自分の管理した牝馬の名前が、いろんな馬の血統表に載っているのを見ると純粋にうれしいですよ。セレクトセールでカレンブーケドールの仔が高額で取り引きされた、なんて報じられたら、たとえ自分とは関係なくても、やっぱり気になっていろいろ調べたくなってくる。これから先、アカイトリノムスメやサトノレイナスも続いてくれるのかと思うと、将来的にも楽しみが増えるよね」